だから相続はきょうだい同士の裁判沙汰にまでなる…合意を促す税理士が言われた思いもよらぬひと言
きょうだい同士が相続問題でモメることのデメリットは何か。相続専門の税理士として数多くの実例を知る天野隆さんは「追徴課税など金銭的なものだけではない。モメた相続は次世代まで影響する」という――。 【図表】相続の手順とその期限 ※本稿は、天野隆、税理士法人レガシィ『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。 ■きょうだいの相続格差が生まれやすいワケ 親子は一親等ですが、きょうだい同士は二親等です。つまり、縦に直接つながっている親子の関係と違って、きょうだいは親を通じて横に並んでいる関係といえます。 横に他人が並んでいると、どうしても隣を向いて自分とくらべてしまいがちです。それが、モメる相続になる大きな原因となっています。「相続格差」が一番表れやすいのは、きょうだいの関係といってよいでしょう。 私たちは、同級生や同業者のように、似たような人と自分とを比較して、ストレスを感じやすいものです。まったく境遇の違う人に対しては、いくら豪華な生活をしていても、地位を誇っていても、それほど嫉妬心は起きません。しかし、似たような環境にいる近い年齢の人だと、どうしても張り合ってしまいます。 その最たるものが、きょうだいです。 興味深いことに、自分とほかのきょうだいを比較するのは、もっぱら親が元気な間だけです。「妹はお父さんにかわいがられて悔しい」「お母さんは自分だけに秘密を打ち明けてくれた」といった具合で、妬(ねた)んだり、喜んだり、怒ったりしているわけです。要するに、「親の愛情の奪い合い」なのです。 ■裁判沙汰になるきょうだい間の二次相続 親がいなくなれば、きょうだいが競い合う必要はありません。奪い合う「親の愛情」がなくなってしまうからです。 私自身の経験からいっても、相続の手続きが終わると、きょうだいという関係が薄くなって他人に近くなりました。他人と割り切ってしまえば、距離感を持ってつきあうことができるので、ケンカにもなりません。 きょうだいの「相続格差」を考えるポイントは、どうやらこのあたりにありそうです。 相続には、「一次相続(片方の親が亡くなるとき)」と「二次相続(残された親が亡くなるとき)」がありますが、相続でこじれて裁判にまで発展するのは、圧倒的に二次相続が多いのです。 一次相続では、「お母さんが全部相続すればいいよ」で済むことが多いのですが、二次相続ではそうはいきません。横並びで競い合ってきたきょうだいが、残された親の財産をめぐって最後の争いをするわけです。しかも、お金の問題にとどまらず、親の愛情に対しても最後の奪い合いを繰り広げることになり、泥沼化してしまうこともしばしば目にします。 最悪の場合、相続税の申告期限である10カ月を過ぎて、税金を加算されてしまうというのに、解決の目処(めど)が立たないことがあります。 私たちが、「税金の期限があるので、そろそろこの辺でどうでしょうか」と提案しても、「問題はお金じゃない。お金だけの問題なら簡単なんですよ」といわれてしまったこともありました。