「2時間ドラマ枠」はどのように誕生したのか? きっかけは “毎回ヌードあり”サスペンスの視聴率がスピルバーグ映画くらいあったから!? それがのちの「相棒」に…
『相棒』はもともと2時間ドラマのミニシリーズだった
以上のように、刑事ドラマが2時間ドラマにおいて主力のジャンルであったことに違いはないが、絶対的中心だったとは言い難い。 同じく事件を解決するという意味で似ている探偵ものなども、明智小五郎の例を見てもわかるように大きな位置を占める。ルポライターを生業とする主人公が名探偵となって事件を解決する内田康夫原作「浅見光彦シリーズ」など、このジャンルでの人気シリーズは数多い。 しかしながら、刑事ドラマが2時間ドラマに欠かせないものであることはむろんいうまでもない。 犯人を導き出す推理の謎解き的面白さに、2時間ドラマならではの名所風景や温泉など観光の要素、またトリックと旅情の両方の魅力を持つ鉄道の要素などが加わることで、特色ある刑事ドラマが数多く誕生したことを忘れてはならない。長寿シリーズとなった西村京太郎原作「十津川警部シリーズ」は、その代表格だろう。 このように多彩な要素を比較的自由に盛り込めるのが2時間ドラマの醍醐味だとすれば、その伝統のなかで誕生したのがあの『相棒』だった。 知られるように、『相棒』は連続ドラマとして始まったわけではなく、最初は『土曜ワイド劇場』で3回にわたって放送された2時間ドラマのミニシリーズだった。 初回の放送は2000年6月のことである。2作目が20%を超えるなどそれが予想以上の高視聴率をあげ、連続ドラマ化されたのである。水谷豊演じる杉下右京のシャーロック・ホームズ的名探偵の側面、だがそれだけでなく毎回テイストを変えて繰り広げられる多彩な物語には、改めて振り返ってみると2時間ドラマの末裔としての匂いが濃厚に感じられる。 この一事だけでも、2時間ドラマが刑事ドラマ史において果たした役割は決して小さくない。 文/太田省一
---------- 太田省一(おおた しょういち) 1960年富山県生まれ。 社会学者。 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。 テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアとの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。 著書に『すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった』(ちくま新書)、『SMAPと平成ニッポン―不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書)など。 ----------
太田省一