海洋プラスチック問題の解決に向けて活動 WWFのゴーストギア調査とは
始まったWWFジャパンによる実態調査
日本では、環境保全団体のWWFジャパンが去年(2023年)から静岡県伊東市と西伊豆町で実態調査を開始しました。2026年9月までに7カ所で調査を行う計画です。 調査は、日本安全潜水教育協会の協力を得て、ダイバーによる実地調査で行われます。調査には危険が伴うため、ベテランダイバーが担当します。釣り糸などに引っかかると本当に危険度が高く、絡まるとパニックになってしまいます。なので、ベテランでないとなかなか難しい調査になります。(浅井さん)。 調査地の選定では、海岸漂着ごみの多い場所や漁業が活発な場所、釣りスポットなど、場所ごとの特性を考慮しているということです。
調査には漁業者の理解が求められる
調査には地元の漁業者の理解が必要です。 「流出した漁具を調査する」と言うとどうしても漁業者に誤解をされてしまうというのが、大きな課題の一つ。 自治体や漁協の了解が必要なため、事前に調整を重ねていますが、漁業者は『自分たちを犯人扱いするのか』と身構える可能性があり、丁寧な説明が求められます。 ゴーストギアの問題は単純な漁業者の責任というわけではありません。大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システム全体が要因となっており、プラスチック製造業者や消費者など、さまざまなステークホルダーが関係しています。私たちは今、スーパーで簡単に魚の切り身を買えますよね。消費者に大量販売するために、流通は大量に魚を仕入れ、漁業者は大量に魚を獲るために効率的なプラスチック漁具を使う。大量生産、大量消費の仕組みから逃れられない構造になっているんです。(浅井さん)。 漁具が流出する原因についても、大型船が漁船の魚網を引っかけて切断してしまうなど事故や天候などによる流出も多く漁業者自身も被害者の立場にあり、必ずしも故意に流出させているわけではないそうです。
サプライチェーン全体での取り組みが必要
では、対策はどうしていけばいいのでしょうか。 現在の漁具は素材が複雑に組み合わさっているため、リサイクルが困難になっています。例えば、漁具の素材メーカーが、リサイクルしやすい素材の開発に注力していかないといけませんし、今度は漁具のメーカーは、リサイクルをする前提で漁具を設計しなきゃいけない。それを使った漁業者さんは、分別などに協力していかなきゃいけないし、さらに、産廃事業者さんだとか、リサイクル事業者さんが協力していかなきゃいけないっていうところです。要はサプライチェーン全体で解決していかないといけない問題ということです。既に、大手魚網メーカー3社が連携してリサイクルの仕組み作りに動き出しているなど、対策が始まりつつあります。(浅井さん)。
想像は難しい それでも知っておきたい
ゴーストギアの問題は単純化できない複雑な課題で、多くのステークホルダーが関与していることがわかっていただけたかと思います。その問題は、漁業者だけでなく、消費者一人ひとりの行動が影響を及ぼすということです。 回収対策に加えて、予防対策として、サステナブルな設計や消費行動の見直しなど、幅広い取り組みが必要不可欠です。 私たちの日々の行動が、どう海洋汚染につながっていくか、なかなか想像するのは難しいことかもしれません。だからこそアウトドアを愛する私たちも知っておきたい話です。 取材:竹中侑毅
FUNQ編集部