「餌かよ」「温かみがない」「これがディストピアか」と非難の声も。「すき家」の「店内でのプラ容器&紙コップ提供」への反応に見るファストフードの変化
しかし、今回の問題で思ったのは、このように「温かみがない」と批判されてきたファストフードも、時間が経つにつれて、人々に何かしらの「温かさ」を提供するようになってきたんだな、ということ。あるいは、人々がファストフードに慣れてきて、そこに愛着を持つようになったともいえるかもしれない。 プラ容器に入れ物が変わって「温かさがなくなった」という人は、器で食べていた頃の牛丼にぬくもりを感じていたから、そう言うわけである。
たしかに、いくつかのコンテンツでも、こうしたファストフードの空間に宿る人間の温かさや交流が描かれる作品も増えている。以前、私は、ファミリーレストランを舞台に展開される創作物を「ファミレス文学」と名付けた。『花束みたいな恋をした』や『THE3名様』などが代表作にあたるだろうか。まさにそうした作品が描かれるぐらいには、ファストフードに対して「温かみ」を覚える人が増えたのだ。 こういう意味では、今回の「すき家ディストピア化問題」(大袈裟ですみません)は、むしろファストフードがいかに我々の生活に根付き、そしてそこに「温かさ」を感じていた人が多かったのかを逆に明らかにしたともいえるだろう。
■結局は、慣れていくのか? そして、こういう歴史を踏まえると、今回のような変化も、時間が経てば、案外人々はすんなり受け入れるのでは? と思わないこともない。 今見てきた通り、初期のファストフードにはかなりの批判もあったけれど、結局は現在、多くの人がそこに不思議な愛着を感じるようになっている。これは、人間が意外とその環境に慣れてしまう、ということを表しているだろう。 であるならば、プラ容器も広がりを見せるにつれて「こんなもんだよな」となっていくかもしれない。
すき家を始めとする外食チェーンは、働き方改革と温かさを両立させられるのか? 長引く円安による物価高や、人件費や水道光熱費が高騰するなかで、今後の展開に注目したい。 ■その他の写真
谷頭 和希 :チェーンストア研究家・ライター