処分覚悟で運転ボランティア 悩む宮城の先生たち
実態は「理解していない」
選択肢がないがために教員がボランティアで生徒を運んでいる実態。そのことを学校側も認識し、同意書まで取っている現実。ところが県教委はそもそもそういう実態があること自体を認めていない。 このような実態を把握しているか、問いに対する県教委の答えはこうだった。 「私達としてはあまり理解していないところです」 答えてくれたのは、宮城県教育庁スポーツ健康課。県教委の公式見解だろう、担当者は以下のように話した。 「部活の引率時に、教諭の車による生徒の送迎は原則禁止としています。大変ですが、約束としては公共交通機関もしくは保護者の送迎をお願いしております」 でもそれは建前論。現場ではそれは通用しない、と突っ込むと……。 「私達の立場としては、やはり決められた通りのやり方でやっていただくしかありません。もし生徒を乗せた教員の車で事故を起こしてしまった場合、責任を取りかねる部分がありますから」 つまり、事故が起きたらどうなるのか? 「処分の可能性も当然出てきます」
「トカゲの尻尾切り」という恐怖
「顧問の車による生徒の送迎は、実は震災で始まったことではありません。そもそも田舎で公共交通機関なんてあってないようなものですから」とある公立高の教頭は明かす。「公共交通機関が割と発達している仙台圏でさえ行われています」 現場の実態と、県教委の建前論。その乖離は、事故が起きた場合に現場の教諭だけが責任を負う危険をはらんでいる。 スポーツ健康課の担当はこう話す。 「事故が起きた際にしっかりと対応できなければなりません。そこがなんともならなければ、県からの許可が下りないと私は思います」 しっかりと対応するのは県教委自身のはずなのに、そこが対応できないから放置する。結果として見えるのは、すべてが現場の責任にされるという恐怖の構図。 ある公立高の若手教師は嘆く。 「結局、我々は事故が起きないことを祈るしかないんですよ。起きたらトカゲの尻尾切りになるのは目に見えてますから。これではバクチと何も変わりません」 (この記事はジャーナリストキャンプ2016石巻の作品です。執筆:河嶌太郎)
河嶌太郎