<センバツへの道・鳴門>/下 秋の四国大会・運命の明徳義塾戦 宿敵破り深めた自信 /徳島
「明徳に勝ってセンバツに行くぞ」。鳴門ナインは2021年10月30日、愛媛県内で開催された第74回秋季四国地区高校野球大会準決勝で強豪・明徳義塾(高知1位)との戦いに挑んだ。前年秋の大会でも準決勝で当たり、七回コールド負けを喫した難敵。勝てばセンバツ出場に大きく近づくが、負ければ可能性は低くなる大一番に、選手たちの緊張は高まっていた。 「試合前、あえて追い込むようなことは言わなかった」と森脇稔監督(60)。代わりにコーチを通じ、監督の家に届いた手紙を紹介した。差出人は鳴門のファンという地元の80代男性。「鳴高野球で感動や感激を幾度も頂いた。ありがとう」「明徳義塾との戦いは是非(ぜひ)頑張って勝ってください。陰ながら朗報を待っています」と記されていた。前田一輝選手(2年)は「市民の方も応援してくれている。うれしかったし、チームの士気が上がった」と振り返る。 まず流れを引きよせたのは鳴門だった。一回表2死一、三塁、5番・藤中温人(はると)選手(同)は初球の直球を見送ると、2球目の変化球をレフトへはじき返し、2者を還す先制打となった。「2球目も直球と思ったが、うまく反応できた。前年の明徳戦ではチャンスで凡退してしまい、悔しさがずっと残っていた。ガッツポーズで二塁に進んだ」 しかし三回裏、適時打とスクイズで2点を返され試合は振り出しに戻る。なお二塁に走者を背負ったエース・冨田遼弥投手(同)に焦りの色を見た土肥憲将捕手(同)は、夏の徳島大会池田戦での大量失点が頭をよぎった。自分が声をかけていれば流れが変わっていたかもしれない。それができなかった事を悔いていた。 マウンドの冨田投手に駆け寄り、「きっちりこの回を抑えよう」と落ち着かせた。冨田投手は次の打者をピッチャーゴロに打ち取り、逆転を許さなかった。 その後は両チームともゼロ行進が続き、迎えた延長十一回。敬遠を含む2四球や犠打でつかんだ2死二、三塁の好機で、打席に立ったのは豊田凌平選手(1年)だ。相手の左腕エースに左打ちの豊田選手は不利だったが、森脇監督は勝負強さを買っていた。打席に入る前、三浦鉄昇選手(2年)に「打ったらヒーローや!」と鼓舞され、ベンチからの声援にも励まされた。「やってやるぞ」と外角直球を振り抜くと、打球はセンター前へ。1年越しのリベンジを果たす勝ち越し打となった。 冨田投手はこの日、延長十一回で161球を投げ抜き、強力な明徳打線を5安打に抑えて13奪三振。野手陣も無失策で支えた。森脇監督は「冨田を含め守りが良かった」と話す。 翌31日の決勝は高知(高知2位)に3-7で敗れ、優勝には届かなかったものの、明徳戦の勝利はナインにとって大きな自信となった。大会後に主将を任された三浦選手は「明徳相手に延長戦で粘り勝ちできたことは、チームの財産になった。甲子園でもこの経験を生かしたい」。冬の間に体作りや基礎固めに取り組んできたチームの目標はセンバツベスト4。夢の舞台での活躍が期待される。【国本ようこ】