県調査で“過労死ライン”超え教員が約6%…残業削減へ子供の”テスト見直し”など新たな動き【岡山】
岡山放送
今、教育現場で教員のなり手不足が深刻化しています。こうした現状を改善しようと、岡山県内で初めての取り組みを始めた学校があります。その実態を取材しました。 岡山県矢掛町の矢掛中学校。午前7時半過ぎ、1人の先生が出勤してきました。大垣竜平先生(30)。担当教科は国語、3年生の担任を務めています。 学校に到着すると早速、職員朝礼。1日のスタートです。この日の大垣先生のスケジュールは4時間目を除いてびっしり授業が入っています。 ■朝の会 「これから朝の会を始めます。起立」 「私立1期入試まであと73日。学校に来る日ではなく実質的な日数が73日。だんだん入試が迫っている」 朝の会を終えると急いで1時間目の準備。荷物を持って教室へ向かいます。 ■授業 「どうやって相手に伝えるか。スピーチは言葉だけで聞いている人に感じさせないといけない。聞いている人に言葉で感じさせる構成の工夫を」 授業を終えても休む暇はありません。 (矢掛中学校 大垣竜平教諭) 「次3年生の授業。(クラスを)往復することになる。休む時間は4時間目。でも休憩時間ではない」 今、教員のなり手不足が全国的に深刻です。 2022年の公立学校の教員採用試験の倍率は過去最低を更新。岡山県内の教員採用試験の倍率も3年連続で下がっています。その理由として、忙しすぎる働き方が指摘されています。 近年、教員の長時間労働が問題化。2024年6月に岡山県が実施した勤務実態調査では、中学校の教職員の1カ月あたりの残業時間は平均43.7時間。「過労死ライン」とされる月80時間を超える教職員が6.2%いました。県教委は2024年度中に残業時間が45時間を超える教職員をゼロにすることを目指しています。 (岡山県教育庁教職員課 黒瀬学総括副参事) 「岡山県公立小・中学校の働き方改革緊急宣言を作成し、教員の勤務時間を考慮した対応など目指すべき学校の姿を示し、働き方改革の推進を図っている」 教員の残業を減らすためにも、矢掛中学校では2024年度、県内で初めてのある取り組みを開始しました。 その1つが「定期テストの廃止」です。定期テストは出題範囲も広く、テストの作成に1週間近くかかることもあるといい、教員にとって負担の大きい業務の1つです。そこで矢掛中学校では、定期テストを思い切って廃止し、代わりに週1回のペースで各単元の習熟度を問う単元テストを実施しています。生徒にとっても単元ごとの理解度が深まるメリットがあるといいます。 (矢掛中学校 大垣竜平教諭) 「テストを作る機会は全くない。業者が作ったテストをそのまま単元テストに使うようになった。楽になった」 午後2時半、この日の授業が終わりました。放課後の光景と言えば部活動ですが、矢掛中学校では、毎週月曜、水曜の部活を休みにし、学習相談の時間などに充てています。2024年度から始めた取り組み、「5時下校」です。 部活がある日もない日も最終下校時刻は午後5時。教員の時間確保につながり、生徒も放課後や家庭での生活を計画的に過ごせます。 (矢掛中学校 大垣竜平教諭) 「早く帰った分、例えば自分が好きなゴルフの打ちっぱなしに行ったり、奥さんが遅く帰ってくる日はご飯を作ったりという時間が持てるようになった」 「子供の成長はうれしい。一緒に試行錯誤しながら乗り越えて、卒業のときにこんなことができるようになったのかという喜びを感じられる貴重な職業」 (岡山県教育庁教職員課 黒瀬学総括副参事) 「働き方改革は教師が楽をするためのものではなく教師の健康の維持・向上につながる。余裕をもって子供と接することが子供の成長にもつながる」 生徒にとっても教員にとっても居心地の良い学校現場へ。進められる教員の働き方改革が今後どのような成果をもたらすのか注目です。 そんな中、教員の働き方改革を巡って、今週、大きな動きがありました。 神戸市教育委員会は2026年度から公立中学校の部活動を終了し、地域のスポーツ団体などによるクラブ活動に移行することを決めました。平日も含めた全面移行は、政令指定都市で全国初めてだということです。 少子化で学校主体の部活動が難しくなっていて、教員の長時間労働の問題もありますから一歩先に進んだ取り組みと言えます。部活動が地域に移行することで生徒の選択肢は増えますが、どのような課題が出るか今後が注目されます。
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