横浜・三渓園で1100年続く庖丁式 食材に感謝、幸せ願い「平和な一年に」
国指定名勝「三渓園」(横浜市中区)の鶴翔閣(かくしょうかく)で2日、包丁と箸のみで食材をさばく儀式「庖丁(ほうちょう)式」が開かれた。平安時代から伝わる行事で、県内の調理関係者らが新年の平穏を祈った。 【写真で見る】マダイを切り分けて表現した宝船。中心に「宝」の字が作られた 儀式は1100年以上前、光孝天皇が料理の名手だった側近に食のおきてを定めるよう命じたことが始まりとされる。衛生面を考慮し、材料に手を触れないように切り分け、天下太平と五穀豊穣(ほうじょう)を祈り、食材の命に感謝する儀式となった。 この日は調理師でつくる「横浜萬屋心友(よろずやしんゆう)会」(同市中区)が式を進め、雅楽の音色が響く中、衣冠束帯をまとった刀主の田代時雄さん(74)=同市神奈川区=がマダイをさばいた。今年の式題は「宝船之鯛」。田代さんは右手に包丁、左手に金属製の「まな箸」を持ち、頭、胴、尻尾に切り分けた後、巧みな包丁さばきで「宝」の字を作った。 「正月に新しい気持ちで、皆さんが健康で過ごし、幸せになれるように思いを込めた」と田代さん。心友会会長代行の島田和気男さん(67)は「ようやく正月が来たという心境。戦禍や食材の値上がりが続く中、平和な一年になるよう願った」と話した。 三渓園では3日まで市指定有形文化財の「鶴翔閣」を特別公開している。
神奈川新聞社