「母親の生きづらさ、助ける社会に」 赤ちゃんポスト設置の慈恵病院・蓮田院長が講演 長崎
親が育てられない子を匿名でも受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する、慈恵病院(熊本市)の蓮田健院長が4日、長崎市内で「いらない『いのち』はない」と題し講演した。新生児の遺棄・殺人事件や「ゆりかご」に預け入れをする背景には、家庭環境など母親本人の「生きづらさ」があるとして「周りの大人が助ける社会に」と訴えた。 同病院が2007年に運用を始めた「こうのとりのゆりかご」。23年度までに、生活困窮などの事情を抱える母親らから新生児と乳幼児累計179人の預け入れがあった。21年からは、孤立出産を防ぐ目的で、病院以外に身元を明かさない「内密出産」にも取り組んでいる。 蓮田氏は、22年の国内出生数が約77万人と過去最少を更新する一方、同年度の人工妊娠中絶件数は12万件を超えていると説明。全国では年間20~30件の新生児遺棄・殺人事件が起き、自身が刑事裁判で関わったケースと「ゆりかご」や内密出産の女性の共通点として「親などからの虐待や愛着障害、境界領域の発達障害や知的障害のいずれかがほぼ全員にある」と語った。 「本人が抱える生きづらさに周りが気付いていない」と指摘。孤立し、追い詰められた結果に事件があるとして「事前に周りが本人の特性を知り、生きづらさを少しでもサポートできるようになることが大事」と強調した。 長崎市の市民団体「長崎いのちを大切にする会」(古賀義代表)が発足40周年を記念し開催。約500人が聴講した。