「夢のよう」鹿児島出身、元荒尾競馬の森信也さんが英国王室主催ロイヤルアスコットで勝利
日本人ホースマンが世界のひのき舞台で輝いた-。英国王室が主催するロイヤルアスコット開催が18日に開幕した。初日に行われた短距離のG1、キングチャールズ3世S(芝直線1000メートル)で勝利を挙げたオーストラリアからの遠征馬アスフォーラ。レース後、シャネル厩務員と一緒に同馬を引いていたのが、日本人の森信也さん(44)だ。アスコット競馬場の大観衆の前で、トップハット、モーニングの正装に身を包み、誇らしげに馬場を歩いた。 森さんは鹿児島県出身。荒尾競馬で厩務員を務めた後、06年に海を渡って南半球のオーストラリアへ向かった。現在はヴィクトリア州(州都メルボルン)のバララットでフリーのトラックライダー(調教騎乗者)として活躍。また、元ジョッキーの川上鉱介氏、市川雄介氏とともに「ライジングサン・シンジケート」の運営にも携わっている。 トラックライダーとして、年度代表馬ネイチャーストリップやモシーン(プリモシーンやダノンエアズロックの母)やモアザンセイクリッド(菊花賞馬ドゥレッツァの母)などにも騎乗経験があり、関係者からの信頼が厚い森さん。最終追い切り前に英国入りし、大一番へ向けた最後の仕上げを担当していた。 「ニューマーケットのエミー・マーフィー厩舎に滞在させてもらい、併せ馬の相手や普段のサポートなど、本当によくしてもらいました。オーストラリアとはまったく違う環境で、馬もよく耐えてくれたと思います。僕は最終追い切り前に現地入りして調教をつけたのですが、先入りしていたスタッフとエミー厩舎のスタッフのおかげで状態の良さは伝わりました。もともと物見癖のある馬なので、ラチのない直線の調教場では逸走する心配もありましたが、彼らのサポートのおかげで無事にレースまで行くことができたと思っています」。 競馬の世界では知らない人がいない“ロイヤルアスコット”。レースから一夜明け、徐々に実感はわいてきているという。「自分にとって、ロイヤルアスコットなんて、これまでテレビの中の世界でしたから、この大きな舞台に連れてきてくれただけでも感謝してたのに、なかなかG1では勝てなかった馬がここで勝ち切ってくれて、G1初勝利まで果たしてくれて…、ただただ感動しています。こういう馬に関わることができて、本当に夢のようです」と喜びを語ってくれた。「一生に一度のロイヤルアスコット挑戦と思って来ましたが、この素晴らしい場所に挑戦できるような馬に関わって、またいつか戻ってきたいですね」。日本生まれのホースマン、夢の続きを応援していきたい。【木南友輔】 ◆ロイヤルアスコット開催と日本人ホースマン 名物の長距離G1アスコットゴールドカップで史上初の4連覇を達成した歴史的名馬イェーツ(アイルランド)は日本人の本木剛介氏が担当していた。アイルランドで開業した児玉敬調教師は松岡正海騎手とのタッグでロイヤルアスコット開催に参戦している。「ダーレーフライングスタート」卒業生の園部花子氏は英国のトップトレーナーであるロジャー・ヴェリアン調教師の夫人として活躍を支える。日本調教馬は00年に森秀行厩舎のアグネスワールドがキングズスタンドS(現キングチャールズ3世S)で2着に好走(鞍上は武豊騎手)し、以降も多くの馬が遠征している。