おはら祭に旧統一教会の参加拒否…主催者トップ務める市長も「誹謗中傷招く恐れ」と団体名や理由明かさず 公表されない審査過程と結論に専門家は「恣意的選別許す先例」と警鐘鳴らす
鹿児島市の下鶴隆央市長は2日の定例会見で、自身が会長を務めるおはら祭振興会が、11月の祭りへの踊り連参加を断った事実があると明らかにした。しかし「振興会において規約に基づき審査した」と説明するにとどめ、拒否した団体の名称や数、理由などは「当該団体に不利益を与える恐れがある」と一切公表しなかった。 【写真】定例会見で記者の質問に答える下鶴隆央鹿児島市長=2日、市役所
同祭参加について世界平和統一家庭連合(旧統一教会)鹿児島家庭教会は1日、振興会から「公序良俗に反する」との理由で参加拒否を通知されたと明かしていた。教団側は文書の受け取りを拒否し、市に公の場での説明を求めている。 下鶴市長は、拒否した団体が旧統一教会であるかとの質問に、「団体名を公表すれば誹謗(ひぼう)中傷を招く恐れがある」と述べた。次回以降の祭りでも同様の対応をする考えを示した。 教団によると、振興会が「公序良俗に反する」とする根拠に、献金を巡り元信者の「返金や賠償を一切求めない」との念書を「公序良俗に反しており無効」とした最高裁の判断を挙げたとしており、教団側は「踊りへの参加と念書は関係ない」と主張。最高裁の判断について下鶴市長は会見で、「公序良俗に反するとされたのは団体(教団側)、念書の双方」との認識を示した。 拒否団体には、審査結果と理由を「しっかりと説明した」とし、結果の再検討や団体側との面会の可能性を否定。市民・県民など公への説明は、規約の事前公表と拒否した団体があったと明かしたことで「最大限尽くした」との認識を示した。
◇拒否は妥当、説明を 鹿児島大学法文学部・三上佳佑助教(憲法学)の話 旧統一教会は公の場に登場したり、政治家とのつながりを示したりすることで信用を獲得し、霊感商法や高額献金の被害が広がった。参加を認めれば宣伝に使われる恐れがあり、拒否判断は妥当だろう。 一方で、自治体は権力であり、その行使には透明性や客観性が求められる。今回、鹿児島市主導の公共性ある祭りで、内容の公表なく市民が選別される先例ができた。規約はどの団体にも適用可能であり、今後も内容を明かさず選別が行われる可能性がある。妥当な判断かどうかを市民は評価することができず、恣意(しい)的との疑念を生みかねない。 参加拒否を決断した以上、振興会の中心である市は、審査の過程を含めて丁寧に説明するべきだ。
南日本新聞 | 鹿児島