『トゥルー・ディテクティブ』はピークTVにおける重要な1本に 名優たちによる複雑な刑事像
第4シーズン『ナイト・カントリー』はシーズン1のテイストに回帰
しかし、振り返ってみても『トゥルー・ディテクティブ』の人気を決定付けたオカルトホラーのトーンはシーズン1だけが持ち得た独自のものだ。ショーランナーを務めたのは、小説家としても知られるニック・ピゾラット。シーズン2以後はハードボイルドドラマへと重心を傾け、ジャンル特有のロマンチシズムが甘さを放つ。シーズン1の強烈な磁場となったマコノヒーの演技、謎めいたセリフの数々、最終話を迎えても全貌の見えない不気味さは後のシーズンには見受けられない。この世の悪意とそれに立ち向かう真なる刑事の善が、光と闇の戦いという宇宙的スケールに喩えられる感動はついぞ戻ってこなかったのである。 ピゾラットが離脱し、スタッフを一新した第4シーズン『ナイト・カントリー』は10年の時を経て新たなショーランナー、イッサ・ロペスを触発し、どうやらシーズン1のテイストに戻ってくる様子だ。既に放送された北米などではシーズン1に匹敵する評価を獲得しており、ロペスは早々にシーズン5への続投が決定した。何より主演がジョディ・フォスターである。サイコスリラーの金字塔『羊たちの沈黙』に主演した“元祖トゥルー・ディテクティブ”とも言うべき彼女が再び捜査サスペンスへ帰還することに、否が応でも期待が高まるではないか。2023年のアメリカ映画俳優組合、脚本家組合のストライキを境にテレビシリーズは年間製作本数を大きく減らし、数字面でピークTVは終焉を迎えたとも言われるが、約10年の黄金期によって新たな才能が芽吹いたかのように傑作が続いている。ぜひとも先駆的なシーズン1とあわせて最新作を視聴してもらいたい。 ©2016 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related service marks are the property of Home Box Office, Inc. Distributed by Warner Bros. Home Entertainment Inc.
長内那由多(Nayuta Osanai)