80年に一度現れる「新星」がもうすぐ夜空に、「かんむり座T星」が爆発間近、肉眼でも
かんむり座T星はいつ、どうすれば見える?
いつ爆発が起こるのかは正確にはわからない。米航空宇宙局(NASA)は今から9月までの間であればいつでも起こる可能性があると言う一方、スターフィールド氏は、これはあくまで妥当な推測であり、上空で爆発が見えるまでに何年もかかる可能性さえあると指摘している。 しかし、爆発が起これば、星を観察する人たちにとっては一瞬のチャンスとなるだろう。 「ピークは非常に早く過ぎます」と、米ルイジアナ州立大学の名誉教授で、かんむり座T星に関する研究の第一人者の一人であるブラッドリー・シェーファー氏は説明する。「爆発は短く、ピークの明るさは数時間しか続きません。そして、急速に暗くなり始め、わずか1週間で肉眼で見える明るさから消えてしまいます」 「普通の人にとっては、外に出て上空を見上げながら、かんむり座T星を肉眼で見たいと思っても、それができるのは2、3晩だけです」とシェーファー氏は補足する。 爆発が起こると、T星は入念に監視されることになるだろう。スターフィールド氏の研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で爆発を観測し、その過程でどれだけの質量が宇宙空間に放出されるのかを正確に測定する予定だ。 しかし、この珍しい現象の最も重要な観測のいくつかは、裏庭にある望遠鏡をのぞくアマチュア天文学者のネットワークから得られるだろう。米国変光星観測者協会(AAVSO)と国際天文電報(ATel)の会員たちは、かんむり座T星を注意深く観察してきた。 ここ数年、平均して10分に1回の頻度で新たなデータがアップロードされており、この連星系がどれほど明るく輝いているかが絶え間なく更新されている。これらのアマチュアの誰かが、間違いなく、爆発の到来を最初に発見したと自慢する権利を主張するだろう。 「多くの人がかんむり座T星を観測している理由は、人間はブームになるものが好きだからです」とAAVSOの事務局長であるブライアン・クロッペンバーグ氏は言う。「アマチュア天文学者の多くは、何かの発見者や、最初の出来事の目撃者になりたいという強い欲求を持っています」 しかし、シェーファー氏は、爆発の知らせを受け取った瞬間に備えて独自の計画を立てており、爆発を見逃すまいと決意している。皮肉なことに、1946年のかんむり座T星の爆発を予測した天文学者レスリー・ペルティエ氏は、季節はずれの風邪のせいで、同年の爆発を見逃してしまった。爆発が起こると、かんむり座T星は、こぐま座の中で最も明るい北極星と同じくらい明るく輝くと予想されている。 「もちろん、暗くなって晴れたら、真っ先に外に飛び出すつもりです。なぜなら、私の観測結果もその光度曲線に貢献してほしいからです」とシェーファー氏は言う。「かんむり座T星が爆発すると聞いたら、望遠鏡は必要ありません。暗くて晴れた夜に外に出て、空を見上げるだけでいいのです」
文=Adam Kovac/訳=杉元拓斗