日本の通貨当局は円安防衛の「火力」得た、YCC廃止-マネックス
(ブルームバーグ): マネックス・ヨーロッパは、日本銀行によるイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の廃止で国債利回りの変動が今後より柔軟になるため、日本の通貨当局は円を防衛する「火力」を得たとみている。
外国為替分析責任者のサイモン・ハービー氏によると、ドル・円相場は依然として米国の金利動向に左右される展開に変わりはないが、日本は過去数年にわたる円安進行時とは異なる状況にあるという。
ハービー氏は19日の投資家向けメモで、日本の通貨当局による「口先介入はより効果的になり、将来の政策期待をタカ派的な方向へ誘導し、円を下支えすることができる」と指摘した。
日銀は19日の金融政策決定会合で、世界で最後まで残っていたマイナス金利政策を終了し、同時にYCCも廃止した。植田和男総裁は会見で、緩和的な環境を維持することの重要性を念頭に置きつつ、今後の政策運営について「普通の短期金利を政策手段とする他の中央銀行と同じような設定になる」と説明した。
日銀が17年ぶり利上げ決定、世界最後のマイナス金利に幕-YCC廃止
植田総裁の話しぶりは近年の米国や欧州で見られた引き締めサイクルの始まりではないことを示唆したため、円相場は対ドルで151円台まで下落、対ユーロでは2008年以来の安値を付けた。この動きは、輸入インフレにつながる円安に歯止めをかけるための政府・日銀の円買い介入の可能性に対し、トレーダーの警戒を再燃させている。
日銀の金融政策の正常化を受け、円相場は19日に1%以上下落。20日午後の取引では一時1ドル=151円台半ばまでさらに下げを広げた。昨年の安値である151円91銭や1990年以来の水準となった2022年10月の安値151円95銭に接近している。
鈴木俊一財務相は19日、日銀決定後の経済、金融、為替市場を注視していく必要があると発言。神田真人財務官は、行き過ぎた動きがあれば、適切な措置を取る用意があると繰り返し述べている。政府・日銀は22年9月と10月に1998年以来となる為替介入を行い、合計の円買い介入額は約9兆円(590億ドル)に上った。