介護職のブラックな実態「夜勤明けにそのまま日勤」「盆正月も休みなし」慢性的な人手不足で過重労働が常態化、自ら命を絶つ職員も…それでも「会社は人を入れてくれない」
会社は慢性的な人手不足を放置
地方出身の吉田さんは、地元の高校を卒業すると、大学入学のため単身東京に出てきた。大学は理系で、趣味はコンピュータとゲーム。兄弟想いの優しい性格だった。吉田さんは大学卒業後も就職できずに就職浪人をしていた。そこで介護の仕事をしている親族が彼に「介護の資格を取っておくと将来役に立つから」と声をかけたのが、介護の道に進むきっかけとなった。 親族の言葉を信じ、吉田さんは資格取得の勉強に励んだ。そして彼が通ったのが、ある大手介護関連企業の講習会だった。 「講習を受けた際に会社の人と知り合い、その人に誘われてそのまま入社することになったと聞いています」(吉田さんの親族) 2010年11月、吉田さんはその大手介護関連企業へ入社した。 「これから不規則な生活になるから」 入社前、そう親族に告げた吉田さんは、介護士としての人生をスタートさせたのだった。最初は介護職員を経験し、数年後にはフロアマネジャーへと昇格。介護の世界に足を踏み入れるきっかけとなった親族とは、時々連絡を取り合っていた。 「利用者の方が亡くなったよ」 あるときは職場での辛つらい体験も語っていたという吉田さん。しかし着実に介護職としての経験を積み、約3年前から施設長を任されるようになった。 当時、吉田さんの給与は手取りで25万円前後。ボーナスは22、3万円。決してよいとはいえない待遇だが、それでも吉田さんは介護の仕事が好きだったという。しかし、こんな愚痴をこぼしたこともあった。 「会社が人を入れてくれない」 吉田さんの施設は慢性的な人手不足の状態だった。だが、吉田さんが本部にかけあっても人員を増やしてもらえないという状況が続いていたという。 「これ以上、健司のような犠牲者を出してほしくないと思っていますので、会社にはしっかりと原因を究明してほしいです」(前出・吉田さんの親族)