バルセロナが直面する変革の推移
今シーズン途中で耳下腺の悪性腫瘍を摘出し、治療のためNYに滞在していた44歳のティト・ビラノバ監督の経過はまずまずで、来シーズンも自身が指揮を取ることを明言した。ただ、治療のためにNYに滞在していた期間、チームとしての統制が崩れかけたとマスコミで報道されたことも事実だ。 イバン・モレーロ記者は言う。「環境に慣れているカンテラ出身の選手は多いが、監督不在時の自主管理、自主トレーニングはやはり難しい。以前、ライカールト監督が病気でチームを離れていたときに、当時のロナウジーニョ、デコら主力の統制がうまくいかなかったことがあった。そのときにカンテラ出身の選手の中にはストレスを感じていた者もいた」。 来シーズンのバルサは変わらなければいけない。戦術、選手の癖などは研究され尽くされ、メッシ包囲網も完成されつつある。CLで見せつけられたドイツ勢との力の差は紛れもない現実だ。 しかし、来シーズンへ向けてメッシがチームを去ることもなければ、回復傾向にある指揮官が変わることもないだろう。つまり、劇的な補強がない限り、今シーズンの延長となってしまう恐れもある。 今のバルサは25歳で円熟期を迎えたメッシのチームだ。しかし、戦術に変化をもたらすような、メッシがいてもいなくても機能するような違うタイプのFWが必要ではないか。絶望的な状況に追い込まれても、簡単には下を向かない屈強なメンタリティーの持ち主も必要なのではないか。 もっとも、熱狂的な応援でチームを後押しするバルセロナ市民は、飛び交うさまざまな情報とあまり真剣には向き合ってはいない。これがラテン的な南欧の気質というものなのか。 新たなシーズンが幕を開けてみなければわからないさ、とばかりにのんびりと、次はどんなニュースが飛び出すのかをむしろ楽しみにしながら、愛するチームが直面する変革の推移を見守っている。 (文責・吉野正人/バルセロナ在住スポーツライター) 東京都生まれ、青山学院大学卒業。1998年よりテレビ東京などで主にスポーツ番組制作に携わり、2002年から2004年までWOWOWにてブンデスリーガ、2004年から2008年まで同じくWOWOWリーガ・エスパニョーラのディレクターとして勤務。2005年にはマジョルカ大久保嘉人選手のドキュメンタリー番組ディレクターを担当。途中1年半のスペイン留学を経て、2009年よりバルセロナ在住。サンケイスポーツ通信員を経て、現在もリーガ・エスパニョーラ関連記事執筆中。