地道な研究開発を続けてきた技が、今年はついに花開いた。化粧品の進化がいよいよ本気で人を幸せにする─ー。そんな時代の到来を告げる名品を、齋藤薫が厳選紹介 【写真】齋藤薫の注目コスメ

今までの＂できない＂を＂できる＂に変える、 大人世代の幸福をかなえる名品6選

PHOTOGRAPH BY SATOSHI YAMAGUCHI

1.まるで1本ずつ毛を足すように線を描ける超極細筆のリクイド、コシのある毛流れをつくるマスカラ、自然な立体感を生むパウダーと、どれもテクニックレスで自眉と見間違うナチュラルな眉メイクを実現。（左から）カネボウ アイブロウデュオ ED3 ￥2,530・カネボウ スタイリングアイブロウフィクサー EF1 ￥3,300・カネボウ デザイニングアイブロウリクイド LE2 ￥3,300／カネボウインターナショナルDiv. TEL.0120-518-520 2.コラーゲン研究から生まれた独自技術「トータルVテクノロジー」を採用。肌をぐっと引き上げるように塗り込むと感じる確かなハリに感動。エリクシール トータルV ファーミングクリーム（50g）￥11,000／エリクシールお客様窓口 TEL.0120-770-933 3. 皮膚水分保持能改善とシワ改善の効果がある「ライスパワー®No.11+」を高配合。できてしまったシワも、未来のシワも、どちらもケアする革新的な1本。ライース®リンクルクロス［医薬部外品］（20g）￥14,300／勇心酒造お客様サービスセンター TEL.0120-73-4141 4.頭皮環境を整え、毛髪を健やかに保つ植物由来の「スカルプ乳酸菌」を配合。生え際や分け目と狙った部分に塗布できるノズル型、塗布後のベタつきを防ぐ速乾タイプと、使いやすいのもうれしい。乳酸菌の力を改めて実感。スカルプリッチ プロフェッショナル（100㎖）￥4,400／日清食品グループ お客様相談室 TEL.0120-923-301 5.気持ちを上向きにする優雅な香りとともに、オキシトシンをキャッチする受容体の発現も促す「金香木エキス」を世界有数の植物研究施設と共同開発。化粧水の前に使う乳液は肌をほぐし、うるおいの浸透を促進。AQ アブソリュート エマルジョン マイクロラディアンス（200㎖）¥11,000／コスメデコルテ TEL.0120-763-325 6. 約2万点の化粧品データを解析し、それぞれの化粧品の浸透効果を最大限に引き出す波形を瞬時に生成。さらに肌悩みに合わせてモード追加が可能。進化しつづける、パーソナライズ美容の真骨頂。HAKEI（ハケイ）￥66,000／ヤーマン TEL.0120-776-282 　30歳も老化を遅らせる薬ができる？　その噂が現実味を増してきた。「老化は病気、だから治せる」との提言で、今や＂不老長寿のカリスマ＂ となったハーバード大学遺伝学教授のデイビッド・シンクレアの研究がすでに臨床段階にあり、4 、5 年後には実現しそうなのだ。医学が若返りに本気になったことで、人類の夢がかなう時代がついに来てしまうのだ。 　じゃあそのとき、美容はどうなるのか。化粧品の立場は？　ただプチ整形が台頭したときも、まったく同じように化粧品の未来を憂慮したものだが、結局わずかもひるむことなく、逆に自らの立場を明確にした。美容医療につきまとう後ろめたさや不安を丁寧に受け止める形で、化粧品だけの効果を蓄積させる喜びや、肌質改善の醍醐味を教えた。皮肉にもレーザーでシミは確実に取れるのに、化粧品の美白はますます活況を呈し、面の美白を目覚ましく進化させているのだ。 　そんな中で化粧品は自らの重要な使命に気づく。それはズバリ人・を幸せにすること・・・。化粧品は本来が＂美しくなる夢と幸せを売るモノ＂ながら、あくまで具体的に幸福感を生むサイエンスを確立させたのだ。その象徴が、話題の幸せホルモン「オキシトシン」を肌効果に変えるコスメデコルテのAQ進化版（5）。まず何よりオキシトシンが肌再生を促すことに着目、その受容体の発現を高めるようなアプローチで、「人を幸せにするオキシトシン美容」を本気で構築してくれた。そもそもオキシトシンは＂接触ホルモン＂とも呼ばれ、自らの手で自らをお手入れするときにも分泌される。同じお手入れをしても打てば響くように肌感度の高い肌に導く働きをもつ一方、感触や香り、仕上がり肌でも丸ごと幸せホルモンを引き出す仕組みを整えた。丁寧に心を込めてお手入れすればするほどその効果が引き出され、不思議なもので、本当に体の中から幸せの波動が湧き上がるよう。暗示効果が暗示ではない、リアルな効果になっていく。実際約2週間でハリ感や弾力、艶感まで実感でき、幸福感を巻き込むぶんだけ手応えが早いのだ。幸せ美容が流行だからじゃない、以前から心と肌のつながりを地道に研究してきたAQだけに、きわめて尊い快挙と言えるだろう。ちなみに＂ツヤ出し先行乳液＂はまさしく幸せな顔をつくるカギ。頰の艶ほど人を幸せに見せるものはないからだ。 　いやそれどころか、化粧品は今、＂人柄＂ にまで関わろうとしている。たとえば資生堂エリクシールがこだわる＂つや玉＂、それも頰のてっぺんに＂つや玉＂ があると、それだけで「幸せそう」「好感がもてる」「褒めたくなる」。つまりは愛にあふれる人ができ上がるからで、まさに＂肌だけの美肌＂ を超え、＂人柄のよい人の美肌＂ をつくっていると思えてならないのだ。それをあの手この手で実現しようとする研究開発、もうそれ自体に愛がある。そんなエリクシール最新作のトータルV ファーミングクリーム（2）も、見るからに上向きの顔をつくる先進のリフト。頰がこけたような＂しぼみだるみ＂ も、頰が下がる＂下がりだるみ＂ も、老け感のみならず不機嫌で暗い印象を与えてしまうたるみだけに、大逆転で朗らかで穏やかで機嫌のよい人柄に見せる力をもつ全方位リフトなのだ。これも何と、世界的な化粧品開発のオリンピックで最優秀賞を獲得した4つの技術を惜しげもなく搭載して実現した驚きの処方。肌へのクサビ、毛穴の立毛筋など、未知なる働きかけが圧倒的なリフトケアを生んだのだ。 　一方、黒のパッケージの通称＂黒KANEBO＂は「希望」をテーマに笑顔を形状記憶させるようなシートマスクなど、＂心の高揚＂までをかなえるポジティブ美容で絶大な支持を獲得しているが、この秋は誰でも難なく自眉の形を変えられる進化したアイブロウライン（1）を発売。成熟世代は相変わらず眉づくりに苦手意識をもつうえに、ホルモンバランスの関係で眉毛もまばらになりがち。さらにたるみからまぶたが悪目立ちし、加齢とともにまぶたが重く広くなるので、できるなら眉の位置を下げたい。そこで眉の上側はすっきり整理、眉の下側にふわりと眉毛を描き加えると顔の重心が下がり、がぜん若い面立ちに。心ばえまで若々しくなる眉の描き換えに最適な傑作群である。 　一方で今、エイジングケアの進化は目覚ましく、今期最も注目すべきなのが、創業169年の造り酒屋、勇心酒造が＂米と発酵＂ の長年の研究から生み出した成分ライスパワー®No.11+（3）が、薬用シワ改善効果を公に認められたこと。日本で唯一＂皮膚水分保持能改善効果＂ を認められ、アトピーへの救世主的な役割も果たしてきたライスパワーNo.11を進化させた成分が、今回、シワ改善効果も公に認められたのだ。言わば重い敏感症状とシワを一緒にケアできるわけで、それってスキンケアの歴史を変えるようなこと。米と発酵がもつ潜在能力を信じ続けた老舗の造り酒屋の使命感に脱帽である。 　ともかくアトピーもシワも、これまで諦めてしまいがちだった深刻なトラブル。それが化粧品で解決できる局面になったのは確かなのだ。同様に深刻だった大人の髪の問題にも今年、目覚ましい回答が！　世界初の＂スカルプ乳酸菌＂ 発見から生まれた先進の養毛剤（4）だが、開発したのは意外にも日清食品。実は歴史も実績もある微生物ライブラリーを持つ日清は、特許取得の＂ヒアルロン酸を作らせる乳酸菌＂ を発見し美容ドリンク、ヒアルモイストWを大成功させている。今回はトウモロコシ由来の乳酸菌N793株に毛髪の密度を高め、抜け毛を減らす待望の効果を発見したことから、この革命的な製品開発につながった。 　最後にもう1 品、家で使う美容機器の本格的なAI化を見せてくれたのが、美顔器の進化を牽引するヤーマンのHAKEI(6)。＂波形＂を独自の技術で操り、市販されている約2万点の化粧品の配合成分と波形をシンクロさせて目覚ましい浸透力を生み、ただの保湿化粧水でリフトケアのような実感をもたらすことが注目を浴びている。化粧品も美容医療も凌駕する美容機器の未来を示唆してくれたのだ。 　かくして独断で選んだ6品だが、どれも美容の本質を突いている。奇をてらった一過性の進化ではない、私たちの未来を本気で明るく照らす先進性が眩しい。今やもうごまかしはきかない、偽物はいらない。そういう時代を堂々体現する明日の名品と言えるはずだ。 齋藤 薫（さいとう・かおる） 美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌編集者の経験を活かして美容記事の企画に携わるほか、化粧品会社や百貨店のコンサルタント、広告や商品開発のアドバイザーなど幅広く活躍中。『「美人」へのレッスン』（講談社）、『美人だけが知っている100の秘密』（角川春樹事務所）など著書多数。 BY KAORU SAITO, EDITED BY EMI ARITA