ヒズボラの無線機同時爆発の黒幕とみられるイスラエル・モサドの暗殺史
マフムード・マブフーフの暗殺
パレスチナのイスラム組織ハマスの幹部が2010年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイのホテルの一室で殺された事件。被害者のマフムード・マブフーフはハマスの軍事部門の共同創設者・司令官で、過去に何度も暗殺未遂を生き延びてきた。 犯行には少なくとも26人の工作員が関与したとみられ、ヨーロッパ各国の偽造パスポートを所持し、ウィッグやメガネを使い、さまざまに変装していた。死因についてははっきりした結論は出ていないが、筋弛緩剤を投与された後に窒息死させられたとみられている。
「スタックスネット」による核施設攻撃
マルウェア「スタックスネット」は2010年に初めて見つかったが、開発は2005年に始まったようだ。コードネーム「オリンピック・ゲームズ」作戦の一環として、イランの核開発を妨害するためにイスラエルとアメリカが共同で開発したと言われているが、両国とも関与を認めていない。 産業用の監視制御・データ取得システムを標的にしたマルウェアだが、核施設の制御システムは外部からの攻撃を防ぐためインターネットに接続されていない。そこでこのマルウェアはネット経由で施設内のコンピューターに感染した後、ユーザーに気づかれないよう潜伏を続け、USBメモリなどを介してスタンドアローンの制御システムに侵入する。 イランの核施設が集中的に攻撃を受け、ウラン濃縮用の遠心分離機が一時ダウンした。
バイクに乗った暗殺者たち
モサドは2010~2012年、イランの首都テヘランでイラン人の核科学者5人の暗殺を試みたとされる(うち1人は殺害をまぬがれた)。イランは2012年1月、アメリカとイスラエルが相次ぐ暗殺を仕掛けたと主張、特にモサドの犯行が疑われると強く非難した。大半のケースに共通する手口は、核科学者が乗った車にバイクで近づき、磁石付きの爆弾を車体に貼り付けて、爆破する前に走り去るものだ。
イスマイル・ハニヤの暗殺
2017年からハマスの政治局長を務めていたイスマイル・ハニヤが2024年7月31日、イランの新大統領の就任式出席のために滞在していたテヘランで暗殺された。これも、モサドの仕業とみられている。モサドはハニヤの滞在先に爆弾を仕掛けたか、ミサイル攻撃を行った模様だ。 2023年10月7日にハマスが実施したイスラエル南部への奇襲攻撃を受け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマス幹部がどこにいようと殺せとモサドに命じたと、記者会見で語った。ハニヤ暗殺の前日には、イスラエル軍はベイルートを空爆し、ヒズボラの司令官を殺害したと発表していた。 マヤ・メフララ