日銀正常化入りで早期利上げの思惑も、4月展望リポートが道しるべに
(ブルームバーグ): 日本銀行が市場の想定よりも早めの政策正常化に今月かじを切ったことで、早期追加利上げの思惑も一部に浮上している。植田和男総裁は物価見通しの上振れが追加利上げの理由になり得るとの見解を示しており、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)が重要な道しるべになりそうだ。
植田総裁は19日の記者会見で、追加利上げが必要になる状況について「物価見通しがはっきりと上振れるとか、中心見通しがそれほど動かなくても上振れリスクが高まることが、政策変更の理由になる」と明言した。マイナス金利解除後も緩和的な金融環境を続けると強調し、仮に利上げしても「ゆっくり進めていける」とも付言したが、従来の植田日銀の行動パターンを踏まえると一定の警戒は必要となる。
昨年4月に就任した植田総裁は、ほぼ1年の間にイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の柔軟化を2度も実施した。最も重要な決断となった今回の会合を含め、そのハト派的な物言いとは裏腹に、市場の想定よりも早めに行動に移してきた経緯がある。
植田総裁が緩和的な金融環境を維持する姿勢を示したことで、19日の外国為替市場では円売り圧力が強まった。円は対ドルで一時前日比1%安の150円70銭と再び150円台を突破し、1日以来の安値を付けた。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、今春闘の内容は想定よりも強く、物価への波及も強まる可能性があるとし、利上げペースが加速する場合は「2025年末の政策金利は1.0%かそれ以上となる」と分析。その上で、今後の為替レートや4月以降の人件費の価格転嫁次第では、「2度目の利上げが7月に前倒しとなるリスクもある」という。
春闘の平均賃上げ5%超、33年ぶりの高水準-日銀正常化へ環境整う
植田総裁は会見で、今後の金融政策運営は「経済・物価・金融情勢次第」と繰り返したが、今回の政策変更を後押しした高水準の賃上げを踏まえれば、サービス価格への転嫁などで先行きの物価が上振れるリスクは否定できない。総裁は強い春闘が基調的物価を押し上げる可能性を問われ、4月会合で議論する展望リポートに反映させていく考えを示した。同リポートでは見通し期間が2026年度まで1年延長される。