自転車保険「3割以上が未加入」という現実! あなたは事故の責任をきちんと取れますか? 加入のメリット・デメリットも考える
統計からの洞察
では、要因である自転車事故はどの程度発生しているのだろうか。警察庁の統計によれば2012(平成24)年から2022年の10年間で自転車関連交通事故は、次のように推移している。 2012年:13万2015件 2013年:12万1040件 2014年:10万9269件 2015年:9万8700件 2016年:9万836件 2017年:9万407件 2018年:8万5641件 2019年:8万473件 2020年:6万7673件 2021年:6万9694件 2022年:6万9985件 これだけみると、事故件数自体は年々減少しているようにみえる。注目すべきは、事故の内容だ。警察庁の統計では、事故の内容を「人対車両」「車両相互」「車両単独」に分類している。うち、車両相互のみは2012年に12万6601件だったものが2022年には6万1882件と半数近くにまで減少している。一方で人対車両、車両単独は、次のような数値になっている。 ●人対車両 2012年:2625件 2013年:2605件 2014年:2551件 2015年:2506件 2016年:2281件 2017年:2550件 2018年:2756件 2019年:2831件 2020年:2634件 2021年:2733件 2022年:2905件 ●車両単独 2012年:2819件 2013年:2498件 2014年:2212件 2015年:1881件 2016年:1559件 2017年:1626件 2018年:1774件 2019年:2691件 2020年:2958件 2021年:3844件 2022年:5197件 車両同士が減ったのに対して、このふたつは減少していない。むしろ増加傾向にある。とりわけ高額な賠償責任につながる可能性の高い、人対車両の事故件数は減っていない。このことが加入義務化の進んだ理由である。
自転車保険需要、新型コロナで浮き彫り
多くの自転車利用者は十分な資力を持っているわけではない。そのため、事故を起こして民事訴訟で賠償を命じられても支払えないケースもあった。 2020年4月から自転車保険の加入を義務化した東京都でも、こうした状況を問題視している。『東京新聞』2020年3月30日付夕刊では、都の担当者の 「事故を起こしても、高額な賠償金を支払えない加害者もおり、被害者を守ることにもなるので、保険に加入をしてほしい」 というコメントが紹介されている。 加害者が賠償金を支払えない場合、被害者は十分な補償を受けられない。極端な場合、加害者が自己破産してしまい、被害者が泣き寝入りを強いられることを避けるためにも、加入義務化は最良の方法とされたわけだ。 こうした状況を受け、自治体による自転車保険の加入義務化が進められてきたが、さらに追い風となったのが新型コロナウイルス感染拡大の影響である。人との接触を避けるために自転車利用者が増加したことで、自転車保険の重要性がより注目されるようになったのだ。 『日本経済新聞』電子版2020年8月2日付の記事では、この時期の自転車保険加入者数の増加を取り上げている。記事によれば、三井住友海上火災保険では2020年3月以降、自転車保険の主力商品の加入件数が前年同月比15~20%増で推移した。またau損害保険も4~5月の合計加入件数が1~2月の合計に比べ7割増であった。 新型コロナウイルス感染拡大を機に自転車利用者が増加し、 ・事故リスクへの備えとして自転車保険への関心が高まったこと ・自治体での義務化が重なったこと が、保険加入率の上昇につながったことがうかがえる。