英総選挙に向け討論会、与野党党首が経済巡り激論 直後の世論調査はスナク首相が優勢
英国のスナク首相(保守党)と野党・労働党のスターマー党首は4日、7月4日の総選挙に向けて初の討論会に臨み、英経済をどのように活性化させるかを巡って激論を交わした。スナク氏は、労働党が政権を獲得した場合に増税を望んでいるなどとして批判した。 スナク英首相 「労働党は皆さんの税金を引き上げる。それが彼らのDNAなのだ。皆さんの仕事や車、年金は――」 7月4日の総選挙を前に初めて行われたテレビ討論会の様子だ。この選挙では、与党保守党の敗北が予想されている。 野党・労働党 スターマー党首 「我々は一部の税金を引き上げる。超富裕層は税金を納めるべきだ。超富裕層のために存在する株取引の抜け穴をなくしたい。また石油・ガス会社は、我々のエネルギーに対して公平な負担を負うべきだ」 両氏はそれぞれ、党の公約に沿って生活費高騰の危機にどう取り組むかについて論戦を交わした。スナク氏は、英国の弱い経済成長を大きく伸ばすための計画を持っているのは自分だけだと主張した。一方スターマー氏は、14年間の経済の混乱を引き起こしたのは保守党政権だと反論した。 医療制度をめぐる議論では、聴衆からスナク氏に対し不満の声や嘲笑が上がる場面もあった。 スナク氏 「NHS(国民保健サービス)はコロナ禍からの回復途上にある。回復にはまだ時間がかかるが、前進している。手術待ち患者などの待機リストは減少しつつある」 スターマー氏 「待機リストは720万人だったのが、現在は750万人だ。数字が減っているというが…首相は数学がお得意だと聞いたが」 スナク氏 「数は減っている」 スターマー氏 「720万人の時に減らすと言っていたが、いまは750万人だ。それがどうして減っているのか説明してほしい」 スナク氏 「かつてもっと多かった時よりも減少しているからだ。NHSは労働争議の影響を受けた。それがなかったら50万件の予約は守られていただろう」 スターマー氏 「つまり他人のせいというわけだ」 だが有権者の間で大きな懸念となっている移民問題については、首相は聴衆の支持をある程度獲得したようだ。スナク氏は、不法移民をルワンダに送って手続きを行うという計画を堅持し、労働党には計画性がないと批判した。 討論会直後に行われた世論調査では、スナク氏が勝利したとの回答が上回った。だが党派別の支持率では、保守党は労働党に約20%ポイントの後れを取っている。 与党の苦境にさらに拍車をかけているのが、英国のEU離脱を主導したナイジェル・ファラージ氏が3日に選挙への出馬を突然発表したことだ。同氏の出馬は、多くの右派有権者を保守党から引き離す可能性がある。