救急医療、患者情報をデジタルで共有 宇部・小野田医療圏域で実証実験【宇部】
宇部、山陽小野田市と美祢市の一部をエリアとする宇部・小野田医療圏域で、デジタル技術を駆使した救急医療情報システムの実証実験が3~30日に行われる。31日には宇部中央消防署でデモンストレーションが行われ、救急隊と医療機関がタブレット端末などで患者情報を共有する様子が公開された。導入により、救急搬送と医療提供の迅速化、効率化が期待される。 実証に参加するのは、宇部・山陽小野田消防局(杉本秀一消防長)と医療圏域の8救急病院、山口大医学部付属病院先進救急医療センター。東京都の医療ベンチャーのシステムを使用する。 同局管内の救急出動件数は昨年、過去最多の1万1654件を記録。救急車の出動から病院到着までの平均時間は51分18秒で、全国平均の47分12秒から約4分遅く、救急搬送の迅速化が課題となっている。 同システムは、タブレットにインストールされた救急隊アプリと救急医療機関の受け入れ状況を可視化するシステムで成り立っており、既に北海道札幌市で運用されている。 救急隊アプリは、運転免許証やお薬手帳をカメラで撮影するだけで、名前、生年月日、既往症、飲んでいる薬などの情報が作成され、車内で撮影した傷口、心電図なども即座に医療機関に送信される。救急隊員の音声入力機能、圏域救急病院の受け入れ状況を表示する機能もある。 病院側は情報を基に受け入れの可否を判断。画像などでより正確な病状が分かるため、到着までに適切な受け入れ態勢を整え、治療の開始を早めることが可能になる。 先進救急医療センターの藤田基准教授は「現状では言葉のやりとりだけで伝わりにくいこともあるので、画像などで現場の正確な情報を得られるのがシステムのメリット」と言う。同局の榎原英樹警防課長は「病院との交渉はスムーズになると思うし、隊員の負担軽減にもなる」と期待した。 1カ月間の実証実験後に情報伝達の正確性、搬送時間などを検証し、システムの導入について検討する。