「食品アクセス困難者」最多更新 過去最悪に 高齢者の4人に1人
日本に住む高齢者の4人に1人が「食品アクセス困難者」=。農水省農林水産政策研究所が2020年国勢調査など最新の各種統計から推計したところ、そんな実態が浮かび上がった。05年に始まった困難者推計は最多を更新し続け、今回も過去最悪となった。高齢化が進む中山間地だけでなく、大都市圏でも増えており、食料安全保障環境は悪化の一途をたどっている。 【データで見る】2020年困難者人口割合の上位と下位の都道府県 困難者推計は、20年国勢調査メッシュ統計の他、全国家計構造調査、電話帳データ、日本スーパー名鑑などを基に行われた。前回15年で利用した商業統計が廃止されるなど、集計方法の一部が過去3回とは異なっている。 65歳以上の困難者は、同世代人口の26%に当たる904万3000人(15年調査824万6000人)と初めて900万人を突破した。うち75歳以上は565万8000人(同824万6000人)と6割以上となり、同世代人口の31%を占めた。05年推計からはそれぞれ226万人、189万人増えた。 都道府県別で見ると、人数が最も多いのが神奈川の60万8000人で、大阪53万5000人、東京53万1000人、愛知50万人など。割合の高い順では、長崎の41%、青森37・1%、鹿児島34%、秋田33・8%、滋賀32・7%などと西日本と北東北で目立った。 32府県が15年比で増えた一方、北海道、新潟、石川、東京、沖縄など15道都県は減少した。増えた要因として同研究所は、高齢者の人口増と免許返納などで自動車を運転できない人の増加を指摘。減った東京や沖縄などは、スーパーとコンビニエンスストアの中間規模の小売店舗の増加が改善につながったと分析した。 また、同じ都道府県内でも、都心部は減少傾向を示したのに対し、周辺地域では増加するなど「域内格差」の分布もわかった。 推計チーム責任者の高橋克也・総括上席研究官は「長崎県の割合の高さは離島や坂道の多さが要因として挙げられる。食品アクセスの課題は地域によって異なる」と述べ、各地の実情を考慮した対策の必要性を指摘した。 困難者問題を巡っては今月末、関係省庁が東京で連絡会議を開き、対応策を協議する。(栗田慎一)
<ことば> 食品アクセス困難者
自宅から食料品店まで500メートル以上離れ、自動車利用が難しい65歳以上。政府が今国会成立を目指す改正食料・農業・農村基本法案で食料安全保障上の課題に位置付けられた。
日本農業新聞