追悼・山本陽子さん 清楚系から悪女まで、昭和を代表する大女優
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1162回】 シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。 【写真】沖田浩之とプロ野球・巨人戦を観戦する、山本陽子
2月22日、女優の山本陽子さんが死去したとのニュースが流れました。 日活ニューフェイスとして芸能界入りしてから、60年以上にわたって映画・ドラマ・舞台で活躍。今月初めにもテレビ番組に出演されて、同じく日活スターの高橋英樹さんと共に元気な姿を見せてらっしゃっただけに、突然の訃報には驚くばかりです。 そこで今回は、山本陽子さんの代表作とともに、正統派女優の魅力に迫ります。
艶やかでエレガント、美貌の演技派女優
日本を代表する大女優として、映画・ドラマ・舞台に幅広く出演。60年以上にわたり、第一線で活躍されてきた山本陽子さん。 上品な和服姿が印象的ですが、実は80代を迎えても、変わらずデニムを颯爽と履きこなすオシャレ美人でもありました。これがまた、シャープでスタイリッシュで。「こんな風に歳を重ねられたらいいな……」と憧れを持つ方も多かったのではないでしょうか。 そして山本陽子さんと言えば、山本海苔店。1967年以降、なんと57年間もイメージモデルを務め、2010年には「専属タレント契約の世界最長記録」としてギネスに認定されたという経歴を持ってらっしゃいます。 そんな山本陽子さんの映画出演作で印象深いのが、『華麗なる一族』(1974年)や『八つ墓村』(1977年)。両作品とも、当時の日本映画界に君臨する大スターがズラリと並ぶ超話題作。錚々たる顔ぶれの中でも引けをとらず、華やかな存在感を放っていました。 そして山本陽子さんを語るにおいて外せないのが、やはり「黒革の手帖」です。
1982年に製作されたドラマ「黒革の手帖」は、ベストセラー作家・松本清張の代表作を映像化したピカレスク・サスペンス。 山本陽子さんが演じたのは地味な銀行員から一転、架空預金者のリストが書き込まれた“黒革の手帖”を武器に、野望と愛欲が渦巻く夜の銀座で成り上がっていく主人公・原口元子。 芸能界入りする前は、証券会社に勤務していたという山本さん。元銀行員という役どころは、ある意味ピッタリだったかもしれませんね。 特筆すべきは、OLから“夜の蝶”へ、その鮮やかな変身ぶり。化粧っ気のない装いも、それはそれでお美しいのですが、クラブのママへと転身してから放つ輝きは圧巻。妖艶な中にも可愛らしさを秘め、なおかつ貫禄も感じさせる。男性を一瞬にして虜にしてしまうのも納得の名演をみせています。 山本陽子さんが出演した数多くのドラマ・映画出演作の中でも、間違いなく視聴者の記憶に残る一作です。 清楚系から悪女まで、幅広いキャラクターを演じてきた山本陽子さん。スクリーン映えする美貌はいつの時代も変わりなく、作品の中で生き続けることでしょう。 謹んで、山本陽子さんのご冥福をお祈り申し上げます。