沢村一樹主演『ユニバーサル広告社』低刺激性だが、期待を裏切らない本物感
直木賞作家、荻原浩氏の人気小説シリーズが初の連ドラ化、『ユニバーサル広告社』(テレビ東京系)が沢村一樹主演で20日スタート。脚本を、つい最近もNHK朝ドラ『ひよっこ』でヒットを飛ばした岡田惠和氏が担当することでも放送前から注目を集めていたが、期待を裏切らない面白さだ。
大手広告代理店で辣腕を振るっていた杉山(沢村)が、勢いで会社を飛び出したものの想定外の悪戦苦闘、拾ってくれたのは弱小会社のユニバーサル広告社。移転でたどり着いたのは港町のさびれた商店街。人通りよりネコのほうが多いのでは、という絶望的ともいえる状況下で、同社社員や住民たちのポジティブな奮闘ぶりが描かれるヒューマンコメディー。 主演の沢村はもとより、社長役の三宅裕司、片瀬那奈、要潤の広告社メンバーがそれぞれに生き生きとしていてすばらしい。セリフに人生が浮かぶといわれる岡田氏の脚本と演者の力量が相まって、安心して観ていられる。商店街の純喫茶の看板娘・藤沢さくら役、和久井映見も効いている。地味な街ではちょっと婚期が遅れて心配される部類に入るかもしれない、そんな適度なくたびれ感も内包しつつ、ユニバーサルのポジティブな仕事ぶりに光を感じ、自らも輝きを取り戻していく。さくらの父親で店主の藤沢宏を演じる、でんでんも、いい味を出している。1話では新参者の杉山や広告屋に対し異常なまでの嫌悪感を発していたが、いまだ独身の娘さくらの過去に果たして何かあったのか。 いまや死語となってしまった”お茶の間”だが、老若男女を問わず一家でテレビを楽しんだ古き良き時代のホームドラマを思わせる。劇中でさくらが広告社の仕事ぶりを目の当たりにして「本物だ」と感嘆するが、それはそのままこのドラマに当てはまるのではないか。役者も本物なら脚本も本物、それを活かす演出も本物ということだ。 とくに刺激的な要素はないが、そこがこのドラマの狙いでもある。スパイス過多の料理に疲れたときは、質素なものを食べたくなる。 次も観たい度 ★★★★☆