文楽の人間国宝・七世竹本住大夫が引退 68年の大夫人生に幕
「やっぱり、きょうは、さみしいて……次の公演にも出るような気して」 最後に、思わず本音をのぞかせた住大夫。それでも「きょうで浄瑠璃はきっぱり縁切ります。弟子の指導にあたります」と、自分に言い聞かせるように続けた。 今後は、弟子の指導や後継者の育成などにあたるという。「文楽のために、これからもご指導していただかないと」と、文楽三味線の第一人者、鶴澤清治。 住大夫自身の文楽への熱い思いや厳しさも、もちろんこれまでと変わらない。 「若いもんはかっこつけず、もっともっと文楽、浄瑠璃と向き合い、稽古せなあきません。みなさん、これからも文楽に叱咤激励、ご指導ご鞭撻をお願いいたします」 あいさつでそう呼びかけ、多くの文楽関係者やファンに見送られ劇場を去るときにも、深く頭を下げた。 竹本住大夫(たけもとすみたゆう) 1924年10月28日大阪市生まれ。89歳、現役最高齢の大夫。住大夫としては七世。父は六世竹本住大夫。1946年、二代目豊竹古靱太夫(のちの豊竹山城少掾)に入門し、豊竹古住太夫を名乗る。1985年、七代目を襲名。1989年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定、日本芸術院会員、文化功労者。2012年夏に脳梗塞(のうこうそく)で倒れ、2013年の1月に復帰したが、 「今までやれていたことがやれなくなった」と、2014年2月28日に引退を発表。5月の東京公演で68年の舞台人生に幕。