朝ドラ『ブギウギ』スズ子と愛助の姿に心が満たされる 五木の振る舞いが今後の鍵を握る?
朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)第58話では、交際を始めることになったスズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の初々しい姿が描かれた。地方公演に向かうスズ子を「行ってらっしゃい」と送り出す愛助の面持ちからは、スズ子を愛おしく思う気持ちがあふれ出していた。そのまなざしに応えるスズ子も同様だ。「はいはい、いちいち見つめ合うんじゃないよ」と五木(村上新悟)にやじを飛ばされる2人だが、のちに語り部(高瀬耕造)が語るように「世界は二人」。「気ぃ付けて」と愛助に見送られ、「はい!」と顔をくしゃくしゃにして笑うスズ子のなんとかわいらしいことか。 【写真】小雪が演じる、村山興業の社長・村山トミ 公演先では、出演料の一部が芋に変わってしまったり、警官から服装や化粧について注意を受けたりと大変なこともあった。だが、愛助に手紙を綴るスズ子の横顔からも分かる通り、愛助の存在はスズ子にとって大きな支えとなっている。手紙を書いたスズ子も手紙を読んだ愛助も、「あなたのスズ子」の文言に大いに照れながら、愛おしくてたまらないといった表情を見せた。特に愛助の反応は魅力的に映る。「あなたの……スズ子」と読み上げた愛助は、感銘を受けているような間を一瞬あけた後、スズ子からの言葉であることを実感して嬉しそうに頬を緩ませる。飾ってあるスズ子のブロマイド写真を見つめると、スズ子から「あなたのスズ子」と語りかけられるのを想像したのか、気恥ずかしそうに顔を隠した。この一連の愛助の反応が微笑ましい。離れていても、手紙を介して2人の世界に浸るスズ子と愛助の姿に、心が満たされる。 その一方で、不穏な動きもある。 楽団の運営が苦しい状態で、五木は坂口(黒田有)とひそかに会って話をする。坂口はスズ子と愛助をなんとか別れさせることはできないかと五木に提案する。五木が「2人を別れさせるのは容易なことじゃない」と言うと、坂口は「ふん、分かっとるわ」「タダとは言わんわい」と金を渡した。 五木はスズ子に「あんたたち、別れてくんない?」と単刀直入に言うが、当然理解されない。五木はスズ子に状況を説明し、別れたふりをしてくれと提案する。「やつをだまくらかして、もらえるものは貰っちゃいましょうよって話」と話すが、スズ子は断る。しかし結論から言うと、五木はすでに坂口から金を受け取っている。スズ子から「まさか、もうお金もろたりしてまへんよね?」と問い詰められた時の「もらうわけないじゃない。何言ってんのよ」とシラを切る姿が、嘘をつく人の典型のようで可笑しみがあったが、同時に、スズ子と愛助の行く末と楽団の行く末に嫌な予感を覚えさせるものでもあった。 だが、引っかかるのは、五木がある写真を大事そうに見つめていたことだ。五木はスズ子の前で「俺だって食わせなきゃならない相手……」とボソリと呟いていた。楽団の運営に頭を悩ませるあまり金に手を出してしまったと思しき五木だが、もしかするとスズ子と愛助の恋路をもっとも理解しているのは五木なのかもしれない。スズ子と愛助を別れさせたい坂口に対して「でも、あの2人は心底ほれ合ってますよ」「恋は盲目」「2人を別れさせるのは容易なことじゃない」と反対するような言葉を返し続けていたことが気になる。 金を受け取ってしまった五木はどう振る舞うのか。彼がスズ子と愛助の関係や楽団存続の危機をもたらす人物にならないことを願うばかりである。
片山香帆