立民代表選、農業政策の違いは? 戸別補償軸に与党と対決
野田佳彦元首相(67)、枝野幸男前代表(60)、泉健太代表(50)、吉田晴美衆院議員(52)の4人が立候補した立憲民主党代表選。政権交代を目指し、戸別所得補償を軸に自民党農政との違いをどう打ち出すか。次期代表が選出される23日の臨時党大会に向け、各候補者による論戦が熱を帯びてきた。 「もうからない農業を社会全体で支える。これが何よりも今、大事な方針転換だ」 今回の党代表選で、農業を巡る論戦の口火を切ったのは枝野氏だ。8月下旬にいち早く開いた出馬会見でこう訴えた。 国民への食料供給など、農業は「公共性の高い役割」を担う一方で、稼げる農業をできる地域、稼げる農産物は限られていると指摘。農業を社会全体で支える必要性を強調し、戸別所得補償制度の導入を訴えた。 同制度は、旧民主党時代から掲げる党の看板政策で、枝野氏以外の3人も主要政策に掲げる。ただ、資材高に苦しむ農家に訴えやすい半面、同制度の一本やりでは他候補と差別化しにくい。
地域再生、食料の国産化も
こうした中、野田氏は、人口減少で存続の危機にある「地域コミュニティの再生」を重要政策に位置付ける。政策集では、都市から地方へ人の流れをつくるため、地方の基幹産業である農業に転職しやすい仕組みを作ると明記。就農すれば奨学金の返済を免除・軽減する仕組みを掲げた。 食料安全保障の強化や地産地消の推進も重視する。5日の政策発表会見では「農は国の基。地域活性化の軸となる産業になる」と強調した。 再選を狙う泉氏は、エネルギーに加え、食料の「国産化」を重要政策に掲げ、食料自給率の向上を重視する。 出馬表明以降、農政に繰り返し言及。「自民党政権でこの20年、(自給率目標は)一切達成されていない」(6日の出馬会見)、「農業を変えるために立憲民主党が立ち上がる」(7日の他候補との共同会見)などと、次期衆院選を控え、自民党への対抗心を鮮明にする。 吉田氏は、政策集で「農業を振興し食糧を国内で賄える日本に」をスローガンに掲げた。小麦や大豆、飼料の国内生産を増やし、食料自給率を80%に引き上げると主張。農業の脱炭素化や政府備蓄米の強化も訴える。 現状、農業に関する目立った発言はなく、農政手腕は未知数。ただ、自身を「サクランボの産地、山形県河北町の八百屋の長女」と紹介し、農業・農村とのつながりをアピールする。 (北坂公紀)
日本農業新聞