台湾で「寄付」なぜ集まるのか? “台湾人は寄付が好き” 震災で見えたワケ
■寄付のワケは…「『国』として認められず…“自分の身は自分で守る”」
台湾出身で日本学術振興会・茨城大学特別研究員として日本と台湾の地域防災について比較研究している李フシンさんに、台湾で寄付が浸透している理由について聞いた。 「まずは宗教が深く関わっていると思います。台湾で信仰心が厚い人は多く、『いいことをすれば、いいことが返ってくる』という思想が社会に浸透しています」 台湾では、仏教、道教、キリスト教など様々な宗教が信仰されていて、災害時には宗教団体が被災者支援に関わることも多い。今回、取材した避難所でも、「仏教慈済慈善事業基金会」という仏教系の団体がベッドなどを提供し、地元政府と連携して避難所運営を進めていた。 さらに李さんは、台湾の歴史や政治環境との関連を指摘する。 「台湾は様々な国から支配を受けてきました。また現在も多くの国から『国』として認められていません。中国からの圧力もある。自分たちで身を守らなければならないという環境の中で、助け合いの精神が育まれたのです」 また、日本をはじめとした外国へ支援を行うのも、「いざというときにはお返しとして外国からの支援を受けられる…という期待がある」と分析しているという。 「国際的に孤立した状態が長く続いた台湾人にとって、外国への援助は1つの“作戦”なのです」
■「自分よりもっと大変な人に」…被災者の願いがつなぐ支援
地震で被害の大きかった東部・花蓮では、9階建てのビルが大きく傾き、1人が死亡した。ビルは地震の2日後には解体作業が始まり、住民はホテルなどでの暮らしを余儀なくされていた。 このビルの9階に住んでいて、家財道具など全てを失ったという女性は、自らが被災しながらも身寄りのない高齢の被災者のサポートを行っているという。インタビューにも気丈に応えていた女性だが、今後の生活再建について聞くと、「考えても仕方がない…」と声を詰まらせた。 そんな女性も、給付される支援金については「自分よりもっと大変な人に使ってほしい」と話す。台湾に根付く寄付の習慣は、こうした他者への思いやりが支えているのだと感じた。