トラックドライバーが「路上に駐車しながらハンドルに足を乗せて寝転ぶ」のには理由があった 「コロナ禍」「2024年問題」に揺れた“国の血液”の実像
ドライバーのマナー問題
一方、世間でトラックドライバーのイメージを聞くと毎度あがってくるのが「マナーの悪さ」だ。なかでもよく聞かれるのが「路上駐車」と「アイドリング」である。 よくエンジンをかけたまま路上駐車している大型トラックの列を見ることはないだろうか。なかには運転席でハンドルに足を上げ、ふてぶてしく寝転がっているドライバーに、顔をしかめたことがある人もいるだろう。 さらにドライバーのマナー違反では、もはや社会問題にすらなっているものとして「尿入りのペットボトルのポイ捨て」や「立ち小便」がある。 トラックが集まる物流センターやSA・PAの大型マス周辺においては、ラベルの内容と全く合わない「茶黄色の液体」が入っているペットボトルが捨てられていたり、ツンと鼻をつくアンモニア臭が漂ってきたりすることが少なくない。 残念なことに、ドライバーのなかにはマナーが悪く、彼らの全体的な社会的価値を下げてしまっている人たちがいるのは間違いない。 しかし、マナーやモラルが低いのは、決してトラックドライバー全員ではなくごく一部。SA・PAで取材中、舌打ちをしながら落ちているペットボトルを無言で拾い上げるドライバーもいるのだ。
さらに、こうしたトラックドライバーのマナーの悪さは、彼らだけの問題として断罪できるものでもない。 彼らの労働環境がよくないのだ。 世間からすれば、「エンジンを掛けたまま路上駐車しておきながら足を上げるとは、なんて態度なんだ」と思うかもしれない。しかし、そのトラックの列の先には「荷主」の施設があり、その荷主から「呼ばれたらすぐに入れるところで待っていろ」と指示されている。待機所が設けられていないため、「呼ばれたらすぐに入れる場所」は、必然的に「路上」になるのだ。 こうして待たされるのを「荷待ち」というのだが、国が公表している平均的な荷待ち時間は1.5時間。が、私の取材のなかで最も長い荷待ちは「21時間半」である。真夏の炎天下、エンジンを消したまま待機すれば、ドライバーは死んでしまう。 長時間運転してきたドライバーは、その待機の間もトラックから離れることはできない。狭い車内のなか、むくんだ足の血の巡りを回復するため、ハンドルに足を上げてその待機時間を過ごすのだ。 一方、尿入りのペットボトルのポイ捨てや立ち小便においては、当然正当化できる余地は全くない。社会に迷惑をかける犯罪行為だ。しかし、その場から離れることもできず、結果的にその場で用を足すしかないこともある。長時間荷待ちさせられている路上にトイレがない状況を改善すれば、大分その数も減るはずだ。 ドライバーのマナー改善は絶対的にしていく必要があるが、それと同時に彼らの労働環境をインフラ面から変えていく必要もあるのである。