阪神が代走に投手を送る執念采配
甲子園球場で12日に行われた阪神―広島戦で、野手が一人もいなくなった阪神が、延長12回にピッチャーの島本浩也(22)を代走に起用するという珍しいシーンがあった。 2-2で阪神の負けがなくなって迎えた延長12回裏。広島の6番手、中崎の熱投の前にマートン、福留が見逃しの連続三振で、二死となってから、ゴメスが右前打で出塁した。ピッチャーの打席となる次打者には、16人目となるベンチ入り最後の野手、田上が代打起用されたため、足の遅いサヨナラの走者、ゴメスに代える代走がもう残っていない状況になった。だが、中崎が1球を投じてボールカウント1-0となった時点で、和田監督が動く。なんとピッチャーの島本をゴメスに代えて代走として送りこんだのだ。次の回がなくなった時点で、ブルペンに待機していた中継ぎ陣の歳内、二神、島本の3人がベンチに引き揚げてきたが、その中で最も、走力のある育成出身の22歳の島本に“ゴメスより速い”と白羽の矢が立てられた。 「中崎投手が1球を投げる前に『代走で行くかも』とコーチに言われたんですが、その1球がボールだったので、本当に『行け』と言われてビックリしました」。 もちろん代走・初体験となる島本もドキドキ状態で一塁へ向かった。 結果、代打の田上はサードゴロで、二塁へ送球され、島本がフォースアウトでゲームセット。それでも島本は、果敢にセカンドへ滑り込んだ。 試合後和田監督は、島本代走について聞かれ「これは脚力。それ以外に理由はないよ」と説明した。 能見と戸田の投手戦で始まった試合は、阪神が2度追いついて2-2のまま延長戦へ突入した。先に阪神が、延長11回に二死二、三塁のサヨナラチャンスをつかんだが、大和が6球ファウルで粘った末に大瀬良の力投の前に凡退。延長12回表には、一死から田中にビデオ判定となる、あわや本塁打のセンターフェンス直撃の三塁打を打たれたが、石原のスクイズを失敗させるなど必死に守った。代走にピッチャーまで注ぎ込んだ執念の総力戦は引き分けに終わったが、ヤクルトが中日に敗れたことで再び同率首位。 「くらいついて最後までやった。明日につながればいい」 和田監督は前を向いた。執念采配は、エース、マエケンを攻略せねばならない明日13日の広島戦につながるはずだ。