瑛太、舞台挨拶やイベント時の目を引くパフォーマンスや言動の理由とは?
「理性を排除し野生化に」
こうしたメディアへの取り組みの裏にあるのは、瑛太自身も述べているが、出演作品への“良い作品だ”という自信から来ているのだろう。『光』で瑛太が演じた黒川輔(たすく)は、幼いころ体験した父親からの虐待や、過酷な事件や事故により、偏った愛憎を持ってしまった青年だ。劇中では父親役の平田満、兄と慕っている幼なじみ役の井浦新と、本能近い、感情むき出しで対峙する。 「僕が演じた輔は、新さん演じる信之に対して幼いころからものすごく執着している役。どうやったら新さんの心や肉体を動かせるのか、いろいろ観察して、チャレンジしました。大森監督はよく『心でやってくれ』って言うのですが、僕らは人間で、野生動物ではないので、やっぱり理性が働いてしまうんです。そこをいかに排除して野生化していくかがテーマでした」
この瑛太の言葉通り、劇中で瑛太と井浦、そして瑛太と平田が対峙するシーンは、自然と息を止めて観てしまうような緊張感と臨場感だ。「新さんはものすごく尊敬していた先輩。現場では、ほぼ会話をしていないのですが、研ぎ澄まされている感覚があり、愛情深い優しさが溢れている半面、演じるときには、裏側の狂気性も見えてきてそれが怖くもありました。とても立体的に人物が浮かびあがってきて、改めて尊敬の念や深い興味が沸きました」と、瑛太にとって井浦との共演は俳優として非常に刺激的だったようだ。
俳優とは孤独に作品に向き合うこと
「いろいろな経験をしながら感じたことなのですが、僕は俳優って孤独であるべきだと思っているんです」と語った瑛太。続けて「周囲と連携をとりながらやることも十分素晴らしいと思いますが、僕はいち俳優部として、孤独に作品に向き合うことが自分にとっての俳優業だと思うんです」と胸の内を明かす。さらに「良い俳優とは?」という質問には「作品に向き合うなかで、スタイルを変えないことも素晴らしいと思うのですが、僕は常に概念を弾き飛ばせる俳優、いろいろなことにチャレンジしていける俳優が、いい俳優だと思うんです。あとは苦しみを楽しみに変えていける俳優ですかね」と語る。 瑛太自身に「いい俳優ですか?」と聞くと「まだまだですね」と自己評価は辛い。しかし、多くの人が瑛太の作品を楽しみにしていることは間違いのない事実だろう。 (取材・文・写真:磯部正和) 『光』 11月25日(土)、新宿武蔵野館、有楽町スバル座 ほか全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム (C)三浦しをん/集英社・(C)2017 『光』 製作委員会