【ラグビー】ワールドカップ戦士の福田健太 新天地サンゴリアスで「信頼を勝ち取る」
新たな空気を吸ってラグビーをしている。 「心機一転。シンプルにジャージィの色は変わりますけど、チームの勝利に貢献したいです」 福田健太。昨季まで在籍のトヨタヴェルブリッツから、旧トップリーグ時代に5度優勝の東京サントリーサンゴリアスへ移籍した。12月21日、東京・味の素スタジアムでの国内リーグワン開幕節へ出るのを目指す。 昨季負った怪我の治療をしていた段階で、このクラブの競争力を肌で感じた。ミーティングに出ても、満を持して芝に戻ってからも、未体験のひりつく空気に背筋が伸びた。 「外から見ていてもチーム内のコンペティション(定位置争い)があると感じていて、僕が入った時もジャージィをしっかり掴み取る、信頼を勝ち取る…ということを意識してきました。(サンゴリアスは)皆が(試合の)ジャージィを着たいという、メンバーの23人がチームを代表して出るという思いが強いのかなと感じます」 身長173センチ、体重80キロ。初戦の頃には29歳。攻撃を引っ張るSHを務め、鋭いサイドアタックを長所とする。 2018年度に明大主将として大学日本一になった。卒業後はヴェルブリッツで5季、プレーし、昨秋のワールドカップフランス大会で日本代表として初キャップを獲った。昨季オフに「自分がどこで成長できるかを考えた」うえで、今回の決断を下した。 目標である日本代表定着に、最も近づける環境がサンゴリアスなのではと考える。サンゴリアスが現代表指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチのかつて率いていたクラブであり、同じSHに長らく代表で活躍した流大がいるからだ。 もともとサンゴリアスには、懐の深さも感じていた。試合中の相手の動きへ柔軟に対応しているようだったためだ。修正力があるという意味で、「後出しじゃんけんができる」。誰かの判断に周りの14人が呼応するイメージか。 「サントリーはストラクチャーにはまらないで、ゲームにコミットしている感じ。それは僕に足りないところでもある。流さんという偉大な先輩のもと、伸ばさないといけない点を成長させられると感じます。いまはまだ『ここが成長した』と胸を張って言えることはないですけど、より一層、判断力が大事になるとは感じています」 今季は小野晃征ヘッドコーチのもと、伝統的な部是の「アグレッシブ・アタッキングラグビー」を見つめ直す。改めて、前を見て「判断」することの重要性を説く。 「現代のラグビーではそれぞれの役割が決まっていますが、サントリーでは、ひとりひとりの判断が大事になる。ラグビーは生き物。どんなに用意したプレーもはまるとは限らない。出ている15人が30個の目でスペースを探し、アタックする。それがサントリーのラグビーをするうえで大事になります」 その「判断」を「◎」「〇」といった風に独自にランク分けし、こんな見立ても語る。 「◎のプレーが出るのがベスト。ただ、常に◎を狙い続けるより、〇でもいいので少しでもチームが前進できるようどこにスペースがあるかを見る。それで、どんどん相手のディフェンスが崩れてくる」 初陣では埼玉パナソニックワイルドナイツとぶつかる。堅守速攻のスタイルで前年度レギュラーシーズン首位、プレーオフ準優勝と結果を残した好敵手だ。 前年度3位にしてリーグワン初優勝を狙うクラブで、新しい風が熾烈な「コンペティション」を制しにかかる。