森ひかる、連続五輪切符!被災後の雪降る金沢で「アナ雪」のレリゴー聴いて「気持ちにスイッチ」
◆パリ五輪代表選考会 トランポリン・グランドチャンピオンシップ (12日、群馬・ヤマト市民体育館前橋) パリ五輪代表の1枠を懸けて行われ、女子は21年東京五輪代表の森ひかる(24)=TOKIOインカラミ=が112・360点で優勝し、2大会連続の切符を手にした。金メダル候補で予選落ちした東京五輪後、一線を退くか悩んだが、トランポリン愛を再確認。ディズニー映画「アナと雪の女王」の主人公・エルサがポイントの勝負ネイルで、パリ行きを決めた。男子は23年世界選手権銅メダルの西岡隆成(20)=近大=が初の五輪出場権を手にした。 失意の東京五輪から3年、森は強く、頼もしくなって帰ってきた。予選の1発目から華麗に大技・トリフィス(前方3回宙返り、半ひねり)を決めるなど唯一の56点台でガッツポーズ。決勝もミスなくまとめ、安心した様子で大きく深呼吸した。これまで「五輪」をはっきり明言してこなかった。この日、大きな拍手を浴び、五輪代表の実感を得て「決めることができた時は、うれしかった」と喜んだ。 19年世界選手権で日本勢初優勝。東京五輪では金メダル候補にも名前が挙がった。本番は予選落ち。泣き崩れた。「もう二度と五輪には出たくない」と退くことも考えた。その後は罪悪感なく遊び、アルバイトも。時給900円(平日)の回転すし店でレジ打ち、料理提供など懸命に働いた。さまざまな経験から行き着いた先は「やっぱりトランポリンは楽しい。頑張るっていいな」。金沢学院大卒業後に所属先を探す中で、現所属に自らメールを送り“営業”。持ち前の明るさと積極性を取り戻し、自分の力で徐々に環境を整えていった。 今年1月、東京から大学までの拠点・金沢に戻った。移動予定の前に能登半島地震が起き、新幹線は止まり、到着後も約1週間は金沢で練習できなかった。「今も不自由な生活をされている方がいる。勇気付けることができたら私もうれしい」 被災後の雪降る金沢で、大好きなディズニー音楽から「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー~ありのままで~」を聴いた。自分を取り繕う必要はない。歌詞が心に響き「気持ちにスイッチ」が入った。この日のレオタードとネイルもアニメの世界観をイメージし、左薬指の爪には主人公・エルサの姿。優雅なエルサのように、大一番で美しく宙を舞った。 「雪の女王」ならぬ「日本の女王」として、2度目の五輪に挑む。メダルラインは57点台が予想され、戦略は「改めて立てていきたい」とプランを練る。「東京は東京、パリはパリで別のもの。一生懸命、全ての思いを楽しんでいきたい」。東京での涙は、パリで必ずはじける笑顔に変える。(小林 玲花) ◆森 ひかる ▼生まれとサイズ 1999年7月7日、東京都。24歳。159センチ ▼競技開始 4歳。イトーヨーカドーの屋上にあった200円で7分跳べるトランポリンで遊び、とりこに ▼主な成績 2013年の全日本選手権で、当時史上最年少の14歳(中2)で初優勝。世界選手権では19年大会で日本勢男女通じ初の個人金メダル。22年大会も優勝 ▼愛犬 トイプードルの「ジャンプ」。競技生活を支えてくれる癒やし ▼親交 シンガーソングライター・井上苑子。「高校生の頃から好き」。応援歌を贈られたことも ▼趣味 ネイル ▼性格 負けず嫌い。幼い頃は父に勝つまで相撲 ▼好きな言葉 「自分を信じて」 ▼家族 両親と兄2人(双子) ◆トランポリンのパリ五輪代表選考 日本は男女ともに最大2の五輪枠獲得を逃し、各1枠の代表を新設の「トランポリン・グランドチャンピオンシップ(TGC)」で選考。昨年の世界選手権決勝進出者やジャパンオープン優勝者、1年間の対象大会で男子は60点、女子は55点を2度超えた選手らが出場資格を得た。日本に五輪枠をもたらした西岡と森には、国内外の対象大会での最高得点をTGCの得点に置き換えられるアドバンテージが与えられた。
報知新聞社