キダ・タローさん「老衰だけは違う。自然やな」…円広志振り返る「老人と見られるのが嫌。美学を貫き通した」
「浪花のモーツァルト」の愛称で親しまれた作曲家のキダ・タロー(本名・木田太良、きだ・たろう)さんが亡くなったことを受け、キダさんと同じ「オフィスとんで」に所属する歌手でタレントの円広志(70)が16日、大阪市内で取材に応じた。キダさんとの最後の別れの様子や、思い出を語り「関西を代表する本当に大スター」と悼んだ。キダさんは14日に大阪府内の自宅で死去。葬儀・告別式はすでに営まれ、お別れの会は未定だという。 マネジャーからの電話でキダさんの訃報(ふほう)を知った。亡くなる数日前から、キダさんの妻でタレントの木田美千代から体調が悪いと、メールや電話で報告を受けていたという円は「ある程度は覚悟もしていました。(聞いた時は)逝っちゃったなと。安らかな眠りであってほしいという思いでした」と振り返った。 葬儀は故人の遺志ですでに家族葬で営まれ、円も参列した。線香の臭いが嫌いだったキダさんの希望で、線香は電気製品で代用。また、大勢の人より家族で静かにという要望もかなえられた。作曲したCMソングや歌謡曲などが流れる中、最後のお別れのあいさつをした円は「ちょっと痩せていたんです。結構男前でビックリしました」と明かした。 日清食品の「チキンラーメン」「出前一丁」のCMソングなど、キャッチーで覚えやすい楽曲4000~5000曲を制作した「浪花のモーツァルト」とは、高校生時代にABCラジオで知り合った。「君は音楽の才能はあるがリズム感が悪い。メトロノームを使って練習しなさいって言われましたね」と苦笑い。音楽面での指導はなかったが、“弟子”としてかわいがってもらった。また、キダさんの作曲家以外の一面として「(飼っている)ワンちゃんをすごく大事にされていたんです。4か月くらい前に『探偵!ナイトスクープ』に犬にかまれたって血だらけで来まして。うちのマネジャーがテープ貼って、血がついたシャツを洗って…。そんな面白い人です。つかみどころがない」と懐かしんだ。 キダさんは今年に入り転んでケガをして入院。徐々に体力が衰えていった。「93歳やから、老衰ということになるんですかって言うと『老衰だけは違う』って。じゃあ死因は何ですかって言ったら『自然やな』って。杖(つえ)をついて歩く姿を見られるのも嫌。自分が老人と見られるのが嫌な人でした」。最後まで自身の美学を貫き通した。音楽家として、そしてタレントとしても大きな輝きを放った。円は「音楽家というくくりの中では大作曲家ですが、芸能界で言えば大スター。関西を代表する本当に大スターだと僕は思います」としのんだ。
報知新聞社