情報に関する管理・統制が甘い日本、経済安全保障を考える上で今こそ必要な“セキュリティ・クリアランス”
TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、“セキュリティ・クリアランス”について取り上げました。 ◆今後の経済安全保障に関わるセキュリティ・クリアランス 近年、米中対立が深まっており、これは日本にとって非常に難しい問題となっています。というのも、中国は日本の最大の貿易相手国である一方で、政治体制が全く異なり、いわば経済活動を持続しつつ国家安全保障も両立しなければならないから。 そうしたなか、東京大学・公共政策大学院の鈴木一人教授は、今後のグローバル経済のポイントとして“セキュリティ・クリアランス”の重要性を唱えます。 鈴木教授は「ハイテク産業、例えば半導体はその設計をアメリカでやるが、材料は日本、製造装置は日本やオランダで作り、最終的な製品は台湾で作る。1つのチップを作るために4~5ヵ国を流れていく」と半導体づくりの過程を引き合いに解説。世界的に分業体制が出来上がりつつありながらも、そこに大きな問題があるとか。 「分業体制を敷くことでそれぞれ断片的な情報を持っている。それを統合し、(情報を)共有しないとこのサプライチェーンの流れはスムーズにいかないし、技術協力ができない。そして、そうなると一緒にやっていくためには情報漏洩を防ぐメカニズムが必要で、だから今、セキュリティ・クリアランスという話が出てきている」と話します。 情報管理という意味では、経済アナリストの池田健三郎さんも「極めて重要」と注視し、「特に日本は“スパイ天国”。コアな国家情報が漏洩する懸念もある。日本は(情報管理に)緩い。これは(世界的な)競争のなかではどうしても不利になるので、私は強化する方法を考え、現実的な対応をしていくべきだと思う」と主張します。 ◆日本が考えるべきセキュリティ・クリアランスのあり方 ここでキャスターの堀潤が、この“セキュリティ・クリアランス(適正評価)制度”について解説。これは政府が起点となり、漏洩すると国家の安全保障に支障をきたす秘匿すべき情報を決め、いかに管理していくのかその体制を構築していくことで、さらにはそれを扱う側、国家公務員、民間企業や従業員なども厳しく規定。その情報にアクセスできるのはどんな人物であるべきなのか、さらには情報を漏洩した際の罰則などが議論されています。 ただし、そこには懸念点もあり、ひとつは、政府による恣意的な秘密指定がないか。また、個人の自由という観点から身辺調査がプライバシー権の侵害に当たるのではないかと案じられています。 一方、欧米諸国を見るとすでに情報を区分し、その内容やアクセス権限などをしっかりと精査しており、それに比べ日本はある部分ではこれから議論していくという段階だということです。 総じて堀は、「この先にあるのは、いわゆる軍事的なアライアンスだったり、自由主義諸国が集まって権威主義国にどう対処し、そのなかで安心して情報を共有できる仕組みを日本が作れるのかどうか」と今後の注目点を挙げます。 また、セキュリティ・クリアランス制度の創設を考える上で、鈴木教授は「コストをかけるべきセキュリティ対策と情報が漏れたときの損害や問題のバランス感覚が大事である」、さらには「相手につけ入れさせないが、社会の持続可能性を高めるくらいの緩さが大切」と指摘しています。これについて堀は「完全に(制度の全てを)固めてしまうと我々はどこの国とも貿易ができない。でも、そうしたなかで何を指定し、何を指定しないのか、そうしたことが必要」と解説します。 株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんは、「これは日本だけの問題というより、諸外国との付き合いで、相手から見たときに『日本がいたずらに緩い』となると『日本と付き合うのが怖い』となってしまう。これは日本の問題というより相互間の問題だと思う」と言います。 続けて、「今、(情報漏洩に対する)日本の罰則は軽度なものだが、例えば韓国では高度な情報を漏らした場合は重い。そこに大きな差がある国同士がまともに付き合えるかといえば、リスクになる。ただ、(罰則が)厳しすぎるとその対象(人物)になりたくない人も出てくると思うので、その辺りのバランスはとても重要」と論じていました。