国の法案より厳しい規制 都が可決目指す「受動喫煙防止条例案」とは?
東京都は6月12日から開かれる東京都議会に「受動喫煙防止条例案」を提出する。受動喫煙対策の強化については、国会で審議中の政府の健康増進法改正案にも盛り込まれているが、都の条例案では、従業員を雇う飲食店は面積を問わず「原則禁煙」をうたい、より厳しい内容となっている。都は今回の都議会での可決を目指し、2020年の東京五輪・パラリンピック前までに全面施行する方針だという。国の改正案と都の条例案を比較してみた。 【画像】受動喫煙防止法案骨抜きに。事実上今とほぼ変わらず?
●飲食店
都の条例案は、喫煙を規制する場所などの大枠は国の改正案に沿う一方、飲食店などで働く「従業員」と、健康への影響を受けやすい「子ども」の受動喫煙を防止することを基本方針として独自ルールを定めた。 飲食店については、ともに屋内を原則禁煙とし、「喫煙専用室」でのみ喫煙可能とする。 違うのは例外規定の部分で、国の改正案では、「客席面積100平方メートル以下」で「個人または中小企業(資本金5000万円以下)が経営」の店であれば規制から外れ、店内での喫煙が可能(ただし、20歳未満は客・従業員とも喫煙可能スペースに入れない)。厚生労働省は禁煙の例外に当てはまる飲食店は約55%程度と推計している。 これに対し、都の条例案では、従業員を雇っている店ならば面積や経営規模を問わずに「原則屋内禁煙」とした。都内の約84%の店が規制対象になる見通しで、これらの店では店内での喫煙は認めらない。店側は喫煙専用室を設けるか、禁煙の店にするか選択する必要がある。逆にいえば、例外的に店内喫煙できるのは、残り16%にあたる従業員のいない店や家族経営の店のみとなる。
●学校
学校などの施設(幼稚園、保育所、小学校、中学校、高校)でも、ともに「敷地内禁煙」とする。しかし、国の改正案では、屋外に喫煙場所を設置することは可能で、そこで喫煙できるが、都の条例案では、屋外に喫煙場所をつくることも認めない。
●加熱式たばこ
加熱式タバコについては、国と同様の扱いになった。都が4月に示した骨子案では、紙巻きたばこなど他のたばこと同様に規制する方針だったが、条例案では、飲食店が分煙用の喫煙席を設ければ飲食しながらの喫煙を認める。これは国の改正案と同じ基準で、加熱式たばこの健康への影響が科学的に明らかになるまでの経過措置。
6月都議会での可決目指す
小池百合子知事は8日の定例会見で、「この条例は受動喫煙の健康影響を未然に防ぐのが目的。誰もが快適に生活できる街を実現するため、人に着目した都独自の新しいルールを構築した」と意義を強調。「受動喫煙対策を一層進めて、健康ファーストを実現したい」と理解を求めた。 都は、6月12日から27日まで開かれる都議会の第2回定例会に条例案を提出し、可決を目指す。可決された後は、飲食店が喫煙専用室を設置したり、都民に周知したりするための時間が必要として、段階的に施行していき、2020年の東京五輪・パラリンピック前までに全面施行したい意向だ。 (取材・文:具志堅浩二)