木箱に本並べた路上販売が始まり うるま市石川の大城書店
大城書店石川店(うるま市石川) うるま市石川のスーパーや携帯ショップ、飲食店などが道路沿いに立ち並ぶ複合ショッピング施設内に、大城書店石川店はある。今から70年前の1954年、読谷村出身の大城行雄さんが読谷村高志保の路上で、ミカンの木箱に本を並べて販売したのが始まりだった。 【写真】初代社長の大城行雄さんが1954年に創業した大城書房(大城書店提供) 行雄さんは本が好きだったこともあり、那覇で本を仕入れて大城書房を立ち上げ、後に屋号を大城書店に変更した。行雄さんが亡くなり、息子の行治さんが1990年代に引き継いだ。最盛期には読谷村内に3店、嘉手納町、石川と合わせて5店舗あった。時代の流れもあり、読谷本店は契約が切り替わるタイミングで店舗から事務所に業務形態を変えた。現在も実店舗として営業しているのは2004年開店の石川店のみになった。 3代目となる社長の大城洋太朗さんは、行雄さんの孫に当たる。設計士として県内で勤めていたが、10年ほど前から店舗の運営に携わり、2代目の行治さんから引き継いだ。大城書店には、家族連れや、祖父母と孫が一緒にやってくる。隣接する店舗の買い物帰りの客も多い。 まるで「一銭まちやー」 駄菓子が充実 新刊本から雑誌、コミック、児童書、沖縄関連本の他に文房具や高級万年筆なども扱っている。また、目玉の売り場として、レジ横にはかつての「一銭まちやー」を思い起こさせるような駄菓子コーナーが充実している。駄菓子や文具目当てで来店した人たちに本も手に取ってほしいとの思いがある。 子どもたちがわーっと走ってきて、「お菓子屋さん行こうぜ」と連れ立って店に入るのを見たことがあるという洋太朗さん。「本屋だけどなと思いながらも、誰でも入りやすい雰囲気になっているのはうれしい」と笑う。 街の書店には文化を提供する場としての役割があると、洋太朗さんは考えている。「スーパーは日常の必需品で買い物に行くが、本は読まなくても生きていける。それでも本屋さんや図書館がある地域は、書物を中心に文化が広がっていくと思うので、本に触れられる機会はとても貴重だ」 書店を続けるための取り組み 古くから地域に根ざす新刊書店が減ってきている中、大城書店は新刊書、文具の販売に加えて教科書販売や事務用品、文具の外商も行っている。老人ホームや介護施設にはトイレットペーパーや黒砂糖などを納品する。「実店舗があるので在庫を持つことができるのは強み。書店を続けるためにさまざまな取り組みを行っている」という。 祖父の行雄さんは「地域の文化とともに歩む」というキャッチフレーズの下、大城書房を立ち上げた。それを踏まえ父・行治さんの代で「カルチャーステーション」になり、石川店ができた時に「本と文具のある暮らし」になった。最近は、さまざまな国籍や宗教の人たちが訪れることも増えている。グローバリズムに対応しながら、対話ができる場所としての本屋作りを目指す。 洋太朗さんは「沖縄書店大賞」「ゲキ推しの1冊! この『沖縄本』がスゴい!」の両賞で実行委員長を務める。沖縄関連本や県内出版社の本の販売にも重きを置き、出版・書店業界を盛り上げることにも力を注いでいる。 県内では2024年5月末でリブロリウボウブックセンター店が閉店した。洋太朗さんは「デパートリウボウは沖縄の人が誰でも憧れる存在で、その中に本屋があるというのはある意味ステータスだった」と、書店の減少を悲しむ。今回、初の試みとなる久茂地ブックスクエアについて「本にスポットライトが当たるのはいいこと。とてもワクワクする」と、取り組みに賛同した。 書店情報 大城書店石川店 社長 :大城洋太朗 住所:うるま市石川1-15-2 営業時間:午前10時~午後9時 電話:098-965-6601 定休日:元日
たまき まさみ