祖父母からの教育費の援助。受け取り方を間違えると贈与税がかかることも?
新学期を迎え、子どもがいる家庭では、入学金や授業料、制服代など、なにかと出費が重なる時期だ。教育費は人生の3大支出のひとつと言われ、どの家庭にとっても負担は大きく、進路次第で予想外の大出費となることもある。 そのため、祖父母が孫のために教育費を援助してくれるというケースも少なくないだろう。「教育費の贈与は非課税になる」ことを認識されている方も多いと思うが、渡し方や受け取り方によって贈与税の対象となってしまうことがあるのをご存じだろうか? 教育費の贈与における注意点について、田邊美佳税理士に聞いた。 ●教育費の援助で贈与税がかからない3つの方法 祖父母が孫に教育費の援助をする際、贈与税がかからないようにするには主に3つの方法があります。 まずは教育費が必要な際に「都度贈与」してあげることです。生活費や教育費など日常生活に必要な費用の贈与については、贈与税は課税されないことになっています。 親ではなく祖父母が教育費を出してもいいのか、という質問を受けることがありますが、祖父母も孫の扶養義務がありますので、負担していただいて構いません。 2つ目は「暦年贈与」、すなわち毎年110万円以下であれば贈与税がかからない仕組みを利用する贈与です。都度渡すのは面倒という方は、毎年贈与税が非課税になる金額をまとめて渡してあげてください。 なお、毎年同じ時期に同じ金額を贈与するとあとから贈与税がかかるのでは、というご相談も多いのですが、たとえば「4年間毎年110万円贈与する」など、毎年一定の金額を贈与する旨の契約書を作らない限り、あとから贈与税が課税されることはありません。毎年教育費の支払いが必要な時期に110万円を贈与して頂いて問題ありません。 最後に「教育資金の一括贈与」です。この制度は受け取る方、つまりお孫さんごとに1,500万円まで教育資金を非課税で渡す事ができるというものです。多額の教育費を非課税で渡すことができますが、この制度には以下のような注意点があります。 ・学校関係の費用は1,500万円までが非課税だが、習い事は500万円までしか非課税にならない ・孫が30歳になったときなど、契約が終了する際に基礎控除を超える未使用残高がある場合には贈与税が課税される 上記注意点は一部ですので、実際に利用される際には制度の詳細(※)をご確認ください。 なおこの制度は、教育費に使った領収書を金融機関に提出して払いだしてもらう必要があるため、利用には手間がかかります。よって、相続税対策が不要な方は「都度贈与」や「暦年贈与」で教育費を渡してあげることをおすすめします。 ●4年間の学費をまとめて送金、贈与税はどうなる? 前述のとおり、教育費を都度贈与する際は原則非課税ですが、渡し方を誤ると贈与税の課税対象になるので注意が必要です。 以下3つのケースをもとに、贈与税がどうなるのかご紹介します。 <ケース1>祖父母から大学の入学金と4年間の学費として、孫の口座に300万円を一括送金した場合 教育費は必要な都度渡すことが必要なため、複数年をまとめて送金した場合には、通常の贈与として贈与税が課税されます。 <ケース2>祖父母が子ども(親)の口座に教育費を振り込み、子ども(親)が学校等に授業料等を支払う場合 振り込んだお金がそのまま教育費にあてられていれば問題ありませんが、普段子ども(親)が使っている口座に振り込まれた場合、教育費に使っているのか、他のことに使っているのかが分からないこともあります。 通常の贈与だと指摘されないために「教育費に使う口座を分けておく」「孫の口座に振り込んでもらう」「祖父母に直接教育費を学校等へ払ってもらう」ことをおすすめめします。 <ケース3>子ども(親)が昨年など過去に支払った教育費について、その分の代金を祖父母からさかのぼって受け取る場合 教育費は必要な都度もらうことが必要なため、さかのぼって受け取る場合には通常の贈与として贈与税が課税されます。 ※国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/01.htm) 【取材協力税理士】 田邊美佳(たなべ・みか)税理士 オネスタ税務会計事務所所長。公認会計士・税理士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。相続税申告、生前対策業務に特化。国際相続案件にも対応可能。 事務所名 : オネスタ税務会計事務所 事務所URL:https://onesta-tax.com/
弁護士ドットコムニュース編集部