銀行の持ち合い株削減加速に期待、損保問題が契機-強固な関係に変化
(ブルームバーグ): 国内3メガバンクなど大手銀行による政策保有株(持ち合い株)の解消がさらに加速するのではとの期待が高まっている。戦後の日本企業の成長を支える要因の一つとされてきた株の持ち合いを通じた強固な取引関係は、近年のコーポレートガバナンス(企業統治)に対する意識の高まりから批判を受けてきた。
銀行業界はこれまでも保有株の削減に取り組んできたが、金融庁が保険料の事前調整問題を受けて損害保険会社に対し、持ち合い株式をなくすよう迫ったことで、メガバンクなどが保有する政策株式に注目が集まっている。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(FG)、みずほフィナンシャルグループの2023年3月末時点の持ち合い株の残高は約10兆円(665億ドル)。この中には約7550億円以上のトヨタ自動車株への投資も含まれる。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストはインタビューで、今年は保険会社や銀行も含め、株式持ち合い解消の第二波が来るだろうと指摘。野村証券の高宮健アナリストらも18日付のメモで「今後、損保各社から政策株が売却されるようになると、銀行も売却を加速させる可能性があり、注目される」と述べた。
アムンディ・ジャパンの石原宏美株式運用部長は、日本銀行がマイナス金利を解除したいま、次に銀行株を動かすきっかけとなるのは、持ち合い解消になるだろうとの見通しを示した。
大手行の関係者らはこれまで、売却を進めれば法人顧客が他の銀行に取引を移してしまう可能性があるなどとして、政策株削減の難しさを指摘してきた。ただ、あるメガバンクの役員によると、海外投資家の圧力などもあり、状況は5年前から一変したという。
MUFGと三井住友FGの政策保有株で最大のものはトヨタだ。これは同社とこれら銀行グループとの歴史的つながりを象徴する。
しかし昨年末、トヨタはサプライヤーへの出資比率を引き下げ、他の株式持ち合いも見直すと発表。これにより銀行側もトヨタ株を減らしやすくなる可能性が出てきた。3メガバンクは他にダイキン工業や伊藤忠商事などの株式を大量保有している。