宇宙飛行士 野口聡一さんも悩んだ“燃え尽き症候群”、回復方法は?【大江麻理子さんが聞いた】
著書『どう生きるか つらかったときの話をしよう』で宇宙から帰還後の苦しかった経験を語られた宇宙飛行士 野口聡一さん。自分らしく生きるために必要なこととは何か、大江麻理子さんが聞きました。 【フォトギャラリー】大江麻理子さんと考える社会問題「働く30代のニュースゼミナール」
“一度立ち止まって、自分のやってきたこと、やりたいことを考えることが大事だと思います” 野口さん “もっと生き方は自由でいいんだよと教えていただいた気がします” 大江さん
Q1 宇宙から帰還後、“燃え尽き症候群”のような状態を経験されたとのことですが、どのような日々でしたか?
野口 2009年の2回目のフライトの数年後からつらい時代に入りました。宇宙での大きなミッション達成という重責がとれたと同時に目標を見失い、何かやり残している気はするけれど何なのかわからない。一方で後輩たちがぐんぐん伸びてきて、自分の居場所がないように思ってしまう。それを認めたくない自分もいました。 大江 その当時野口さんとお話しする機会があり、「民間の宇宙船が完成したら最初に乗るのは自分だ」とすぐに次の目標を持っていらっしゃる感じがしましたから、聞いてびっくりしました。 野口 そう自分を言い聞かせつつも、なかなかそちらに進めない自分がいて。止まることもできず、煮え切らない、もやもやした時代がありました。
Q2 そんなとき、「自分らしく生きる」ために見つけた回復方法はなんだったのでしょうか?
野口 人生の棚卸しをすることです。バイラ世代でも、ひたすら走り続けている、という方が多いと思うんですが、一度立ち止まって自分がやってきたこと、これからやりたいことなどを考え直すことが大事だと思います。 大江 私、野口さんがJAXAを辞められるときの会見で、退職される理由をお伺いしたのですが、野口さんのお返事にジーンとしたんです。コロンビア号の事故で亡くなった仲間のことを考えていらしたという。そして、「生きているからこそできる新しい展開」をしたいと。 野口 そうですね。宇宙飛行士を続けた理由のひとつとして、あの事故が大きかった。帰還できなかった7名の飛行士のことを語り継ぐこと。そしてまだ余力があるうちに、一回リセットして人生の第二段エンジンの着火に移りたいと考えました。 大江 バイラ世代の方の中には、「自分のやりたいことがわからない」という悩みを寄せてくださる方もいます。野口さんはどう思われますか? 野口 「自分の得意なこと」を考えてみるのも意外といいと思います。得意なことはやっていても疲れを感じづらいので、サステナブルだともいえます。 大江 確かにそうですね。やはりまずは己を知るというのが大切なのですね。