審判にとっても秋は勝負の季節!? 選手とともに晴れ舞台へ研さんの日々/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く
【山崎夏生のルール教室】 【問】セ・パともに最終順位が決まり、いよいよクライマックスシリーズから日本シリーズへと佳境を迎えていますが、出場審判以外はもうシーズンオフなのでしょうか? 今季のNPB現役審判は総数で56人だそうですから、かなり人員の余裕がありますよね? 【答】いやいや、とんでもない。審判も日本シリーズの終わるころまでは、というよりもシーズンオフなど現役中はないのだ、という覚悟で日々を過ごしています。研さんを怠れば淘汰される厳しさは選手と同様です。 まず一軍レギュラーと目される審判たちは、ほぼ全員がクライマックスシリーズに出場します。控え審判を含む7人の完全クルー制で、そこから今季の最優秀評価を得た7人が日本シリーズへの出場切符をつかみます。必ず、ではありませんが今後への期待を込めての若手選出もあります。 育成契約を含む若手18人は10月7日から28日まで宮崎県で開催されているみやざきフェニックス・リーグに参加しています。これはファーム中心の秋季教育リーグでNPB12球団のほか、くふうハヤテベンチャーズ静岡、KBO(韓国プロ野球)3球団、四国IL選抜、日本独立野球機構選抜という18チームが参集するのです。毎日9試合が県内各地で行われ、審判も3人制で27人が必要ですから、ほかに研修審判6人、KBO審判3人も加わります。ここで全18試合(球審6試合)が課せられますが、ここは単なる鍛錬の場ではなく、来季へのスタートと位置付けられています。 シーズン中は独立リーグに派遣されている研修審判は、この18試合が最終テストとなります。この1年間の成果が認められれば、来季からのNPBとの育成審判員契約(二軍戦のみに出場可能)を結べるし、まだ技量不足ならば研修契約の継続あるいは解除です。また10人の育成審判も本契約(一軍戦への出場資格)を得ようと必死です。育成契約は最長3年で、この間は昇給もありませんから死活問題なのです。全試合に指導員も帯同し、一つひとつのジャッジの重みやプレッシャーは公式戦以上かもしれません。 夏の暑さのおさまった爽やかな球場ですが、グラウンド内では若き野球人たちが晴れやかな舞台をつかむための熱い戦いが繰り広げられています。今をときめく大谷翔平選手(ドジャース)のみならず、ほとんどのスター選手たちがかつてはこの地で汗を流しました。ここで彼らとともに切磋琢磨した審判たちも来週からの日本シリーズを裁くでしょう。その雄姿に感無量です。
週刊ベースボール