座って接客してもいいですか? レジなどに椅子を導入する新しい接客のかたち
時代と共に働き方も変化。トライ&エラーを恐れないことが大切
――昨今、従業員の身だしなみについて、昔と比べて自由度が向上したように感じます。その理由は何だと考えますか? 鈴木:最も大きな理由は、働き手の不足だと思っています。以前はピアスNG、髪色はダークブラウンより暗く、髪型にも指定があるなど厳しいルールが設けられていました。ただ、それでも従業員の応募はそれなりにあったはずです。 しかし、時代の変化によって働き手は不足し、さらに身だしなみの自由度が低い職場への応募は減少する傾向にあるんです。逆に髪型や髪色などのルールがない求人ほど、応募は増えているんですよ。 「いかに自分らしく働けるか」も重視される時代です。企業もそれに合わせて変化していく必要があるのかもしれませんね。 ――誰もが働きやすい社会になるため、一人一人が取り組めることはなんでしょうか? 鈴木:企業としては、恐れずにトライ&エラーを繰り返していくことではないでしょうか。 本プロジェクトを進めていく中で、従業員の働きやすさを改善したいと考える雇用主は多いものの、施策を実施するまでには至らない職場が多いと気づきました。先ほどの話と重複しますが、座りながら働くことについても、誰もが「座ってもいいのではないか?」と思いつつも、「どこもやっていないからやらない」というふうになったのではないかと思います。それでは働きやすさはなかなか改善しません。 導入コストなど複雑な事情はあるかもしれませんが、働きやすさの改善は業務効率や成果向上にもつながると思います。まずは現場から声をしっかり聞くことが大事なのではないでしょうか。 個人としては、雇用主と従業員の意見交換の場を積極的につくるのが重要だと思います。異なる世代の人と意見交換をしてみると新しい発見があるでしょうし、お互いに理解が深まるのではと思います。 ――「座ってイイッスPROJECT」を、レジ打ちや小売店以外に展開していく予定はありますか? 鈴木:そうですね。工場や病院なども立ち仕事が多いので、マイナビバイトチェアの設置を検討するという声もいただいています。 また「座ってイイッスPROJECT」の特設サイト内には、従業員の方や雇用主の方の声が届けられる「ご意見ボックス」を設置しています。今後はその中から働く上での困り事をキャッチして、雇用側と従業員側、双方がWin-Winとなるプロジェクトを媒体として考えていきたいと思っています。
編集後記
以前は「接客業は黒髪が当たり前」という風潮でしたが、現在はそうではなく、おしゃれなヘアカラーをした店員さんがいても、疑問にすら思わなくなりました。 それと同じように「座って接客すること」も近い将来には違和感がなくなり、「なんであの時代は立っていたんだろう?」と疑問に思う社会が訪れるような気がします。 世の中にはまだまだ「当たり前だと思っているけど、それを破っても誰も困らないルール」というものがあると思います。当たり前を疑うということの重要性に気づくことができた取材となりました。
日本財団ジャーナル編集部