歴史的不漁のサクラエビ 駿河湾に何が起きているのか?
夜の海でキラキラと輝くことから、「海の宝石」と呼ばれることもあるサクラエビ。かき揚げにするとおいしく、正月料理の食材にもなる。例年、今頃の時期は秋にとれたサクラエビが出回っているはずだが、今年は異変が起こっている。市場にサクラエビの姿がないのだ。 「水メジャー」が担う浜松の下水道事業 水道コンセッションの「先例」になるか? 日本国内で唯一、サクラエビ漁が行われている駿河湾で秋漁が行われなかったことが理由だが、いったい駿河湾のサクラエビに何が起きているのだろうか?
記録的不漁の春漁、秋漁は親エビ少なく休漁に
クリスマスも終わった12月26日。サクラエビ漁の中心である静岡市清水区の由比港を訪ねると、直売所のドアに貼ってある紙をじっと見つめる老夫婦の姿があった。「サクラエビのかき揚げが好きで由比によく食べにきます。サクラエビがないとはニュースで聞いていましたが、港に行けばもしかしたらと思って寄ってみたのですが…」と残念そうだ。その目線の先には「桜えびの冷凍生・釜揚げ・煮干しは、在庫切れとなっております」と記された紙が貼ってあった。付近でサクラエビのかき揚げ料理を出すお店なども、サクラエビがないため店じまいしている状況だ。 「春漁が記録的な不漁だったのです。例年だったら10月下旬から秋漁をはじめるのですが、春漁を受けて秋漁をどうするのか話し合って11月12日からとりあえず始めました。異例ですよ」。こう話すのは静岡県桜えび漁業組合副組合長の實石正則さん。サクラエビ漁を40年手がけてきたベテランだ。 サクラエビが生息するのは、駿河湾、相模湾、東京湾と国外の台湾周辺に限られている。漁が行われているのは国内では駿河湾だけ。由比港と大井川港の2つの港に水揚げされて競りにかけられ、静岡県内、首都圏、そして全国へと出荷される。駿河湾のサクラエビ漁は3月中旬~6月上旬にかけて春漁、10月~12月にかけて秋漁が行われているが、2018年の春漁の水揚げ量は前年の811トンの半分にも満たない312トンと記録的な不漁だった。 サクラエビは寿命が15~18カ月と短く、産卵期は5月下旬~11月中旬。春漁では45ミリ程度まで成長したサクラエビがとれ、水揚げ量も秋漁より多いのだが、その春漁が過去にない不漁となったことで「駿河湾のサクラエビの数そのものが減ってしまった」という懸念につながった。産卵期を経て行う秋漁では産卵を終えた親エビと生まれた稚エビをとることになる。サクラエビの数が減っていた場合、秋漁で稚エビをとってしまうと次の春漁でサクラエビがさらにとれなくなる恐れがあるのだ。 漁業者は難しい判断を迫られた。県の水産技術研究所などと話し合い、体長35ミリ以下の稚エビが3分の1以上いる群れに投網はしないなどの自主規制のルールをつくり11月12日より秋漁をスタートさせた。サクラエビは水深200~300メートルに生息していて、夕方から夜にかけて水深20~50メートルまで浮上するという。漁は2隻の船が1組になって魚群探知機で群れを探し、浮上してきたサクラエビに網を投入して行う。秋漁では自主規制のルールにもとづき、試験的にサクラエビの群れに網を投入してサクラエビを採取して調査を実施した。その結果、いずれの調査でも稚エビの割合が多く漁の対象とならず、結局、一度も出漁しないまま、12月13日に秋漁の打ち切りが決まった。