<春風を待つ―センバツ・宇治山田商>力合わせ、選手支える 全員1年生、マネジャー5人 記録や心遣い、結束に貢献 /三重
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する宇治山田商の選手を陰に陽に支えているのが、マネジャー5人だ。16年ぶりに出場権をつかんだ夢の舞台に向けて、マネジャーも力を合わせながら奮闘し続けている。【原諒馬】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「投手、田中(燿太(ようた))君に変わりました」。3日に同校で行われた野球部の紅白戦で、5人はグラウンドの隅で、交代した選手の守備位置と名前を声に出しながらお互いに確認すると、その後の試合の流れを見逃さないよう、素早くスコアブックに記入した。試合展開を克明に記録したスコアは、各選手のデータ分析などに生かされるため、記入は重要な役割だ。マネジャーが最大2人までベンチに入れる公式戦でも、チーム独自の記録を残すため記録員として担当する。 マネジャーの仕事はほかにも、普段の練習でのランニングのタイム測定や、使ったタオルの洗濯、訪問客への対応など、多岐にわたる。縁の下の力持ちで、チームにとって必要不可欠な存在だ。 片出紗楽さん▽西山佳那さん▽宮西真央さん▽池山美優さん▽片出茉弥さん――の5人はいずれもまだ1年生だ。池山さんの場合は入学時に3年生のマネジャーに誘われて、春の県大会の試合を見に行った。そこで選手らが本気で試合に向き合っている姿に心を打たれた。「夢みたいな空間だった。彼らを応援したい」と入部届を出したという。 ただ5人が入部した時、マネジャーは2年生が不在で、3年2人のみ。夏の三重大会が終われば、1年生だけになる。入部してから5人は必死に仕事を覚えた。 特に大変だったのは、スコアブックの記入だった。野球のルールなど基礎知識を頭に入れておかなければ、正確な記入はできない。5人とも入部するまで野球は未経験だったが、記入する守備位置や記号の意味を覚えようと、日々の仕事の合間にクイズを出し合った。「守備位置(3)は?」「ファースト」。助け合っていくうちに5人の友情も深まり、今では部活が休みの日に遊びに行くこともあるほど仲は良い。 心がけているのは、常に全体を見て、選手に異変がないか気にかけること。練習の合間などに「最近どう?」などと声をかけるようにしている。精神的なプレッシャーに苦しんでいても、なかなか弱音を吐けない選手もいる。西山さんは「私たちが暗い感じで接していたら選手の気持ちも落ち込んでしまう。(選手の異変を感じたら)時には励ましの言葉を送るようにしている」と話す。 その心遣いは、昨秋の東海大会でも発揮された。準決勝で豊川(愛知)にサヨナラ負けした直後、涙を流す部員がいる中、ベンチや球場外で「お疲れ様」と声をかけて励ました。そういった要所での言葉が「支えになった」と話す加古真大(まさひろ)(1年)は、「いっぱいコミュニケーションをとってくれる。このチームの大事な1ピースだ」と語る。マネジャーの応援や支えは選手に届き、チームの結束力につながっているようだ。 甲子園出場が決まり、池山さんは「より気持ちを高めて、選手と一緒に1日を大切に過ごしていきたい」と意気込む。甲子園でも5人は記録員としてベンチ入りしたり、スタンドでの応援に加わったりして、チームに貢献する。 〔三重版〕