業務上横領罪に問われた女性へ無罪判決、広島地裁 「着服の認定には疑問が残る」
会社の預金180万円を着服したとして業務上横領罪に問われた広島市東区の女性(65)の判決が5日、広島地裁であり、石井寛裁判官は「着服したと認定するには疑問が残る」として、無罪(求刑懲役2年6月)を言い渡した。 女性は市内の清掃会社の経理課長だった2018年10月~19年8月、銀行支店の窓口で6回にわたり、会社の口座から各30万円を払い戻し、自身の口座に入金して着服したとして21~22年に逮捕、起訴された。 公判で検察側は、女性がいずれも窓口で出金した直後に同じ支店のATMで同額を自身の口座に入金したのを理由に「出金した現金をそのまま預け入れたと極めて強く推認できる」と主張。女性は「横領はしていない」と無罪を主張していた。 石井裁判官は窓口で処理され、女性がATMで操作を始めるまでの時間に触れた上で「この短時間でATMでの取引を開始するのは相当困難」と指摘。女性が出金した現金以外の資金を持っていた可能性なども挙げ、「推認に疑問を生じさせる事情が複数あり、着服したと認定するには足りない」と判断した。 広島地検の池田宏行次席検事は「判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とコメントした。
中国新聞社