袴田事件を20年以上取材した周防正行監督「あまりにも遅すぎる」「不幸な人が出ないようなルール作りを」
1966年、静岡県清水市で一家4人が殺害された通称「袴田事件」。袴田巌さんは死刑判決を受けたが、今年9月26日の再審で無罪判決が言い渡された。20年以上袴田事件を取材してきた、映画監督の周防正行氏は姉・ひで子さんの人生を賭けた闘いを見続けてきた。 【映像】袴田巌さん、無罪判決後の言葉(実際の映像) 周防氏はひで子さんについて「袴田さんが精神的に少しバランスを崩されて、ひで子さんにも会わなくなった。それでも毎月通って『あなたの味方はいる』ということを伝え続けた。本当に…弟さんの無実を信じて、その時の状況に合わせて自分ができることをやって闘い続けて。本当にもうひで子さんすごいです、できないです」と尊敬の念を示した。 今回の再審では検察側のねつ造を初めて認定した。周防氏はこのことについて「大体裁判所って判決理由は、検察を傷つけないような言い回しに変えることが多い。本当にねつ造だなと思っても、せめて『ねつ造の疑い』くらい。『疑いじゃなくてねつ造だ』として、なおかつなぜねつ造なのかという理由もきちんと書いてある。そこが素晴らしい」と評価した。 再審の扉が開いたのは死刑判決確定から34年後の2014年。事件から48年ぶりに袴田さんは釈放された。それでも検察側は、あくまで犯人は袴田さんとし、のちにねつ造と認定される「証拠」を盾に有罪立証を行うとしてきた。 周防氏は「彼らはそれが正義だと思っているとしか理解しようがない。自分たちが法律に反するひどいことをやっている、その意識はあったとしても、それは真相究明するための仕方ないことぐらいの意識。彼らは別に悪い人間じゃない。ただ、今までの歴史の中でやっていたことが正しいとされていたことをきちんと守っているわけで。忠実な人たちなんですよね」と分析した。 そして事件発生から58年、やり直し裁判で地裁が下した判決は無罪。証拠はねつ造と認定した。判決について周防氏は「怖いですよね。本当に裁判官によって結果は違いますからね。本当はあってはいけないわけです。でも最後は人間ですから。そういう誰に当たるかという、それぞれ個性があって違うから問題ですけれど。全部裁判官の個性に任せられたら、裁かれる方はたまったもんじゃないですよね。今回は58年経っての無罪であまりにも遅すぎるんですけど、それでも最後に当たった裁判官に恵まれた」と振り返った。 そんななか、支援者たちによる検察の控訴断念を求める動きは各地に広がり、オンライン署名は5万人を超えている。 控訴について周防氏は「検察には控訴する権利がある。その理由が『ねつ造と言われるのがちょっと癪なんでそこだけ下げて有罪って言ってください』と言うのだったら、そんな卑怯な人たち?と思いますけど」と皮肉のように語った。 冤罪事件について「世の中にはそういう人、まだまだ本当は冤罪なのに、それを晴らすことのできない人がたくさんいる。そういう人がいることがわかったわけだから、そのことの想像力ぐらい働かせて、もうこういう不幸な人が出ないようなルール作りをしてほしいって思ってほしい」と訴える。 「今、ひで子さんが頑張っているのは、やっぱり袴田さんの58年をせめて無駄にしてほしくない。だから袴田さんの例を見て、これからの法律改正につなげてほしい。本当にその思いだけで、今は活動していらっしゃる」と、ひで子さんの心情をおもんぱかった。 なお、2024年10月8日、袴田巌さんを無罪とした再審判決について、検察当局が控訴を断念することを決めた。これで袴田さんの無罪が確定することになった。 (『ABEMA的ニュースショー』より)
ABEMA TIMES編集部