新しいトヨタ ヤリスは目に見えぬ進化が凄かった! “熟成”を実感したコンパクトハッチバクの完成度に迫る
ただの1.5リッターガソリンの小型車ではない
1490cc直列3気筒DOHCの「ダイナミックフォースエンジン」とモーターの組み合わせが生み出すシステム最高出力は116ps。エンジン単体では 91psと120Nm、モーター単体では80psと141Nmを発揮する。車重1100kgの小型車を走らせるのに十分なパワー&トルクを備えている。 その一方、プラグインではないのに、スタートして数分はリチウムイオン電池のエネルギー残量が許す限り、EV走行する。これはサーキットでは経験できなかったことで、あらためて感心した。このとき、液晶ディスプレイの隅っこにグリーンのEVマークが出てきて、EV走行比率は100%と、新しい液晶ディスプレイに表示される。EV走行中は当然、たいへん静かでスムーズで、このクルマがただの1.5リッターガソリンの小型車ではないことをドライバーに知らしめる。 やがてエンジンが自動的に始動する。EV走行比率は65%に下がり、ハイブリッドであることを再認識する。 16インチを装着しているため、街中で凸凹路面に出くわすと、タイヤがややドタドタする。それでも、そのドタドタはショックが丸められていて、小型車として悪い乗り心地ではない。むしろドタドタも味のうち、である。路面からの衝撃を受けつつ走る。というところがコンパクトカーならではのキビキビ感につながっている。 首都高速を走ると、ボディ剛性も上がっている気がする。さらに高速だと、EV走行比率は71%に上がる。最近のトヨタ式ハイブリッドのEV比率はこんなに高いのだ。首都高速の流れに乗って走行していると、エンジンが隙あらば、という感じで休止と再始動を繰り返してCO2の排出を減らそうとする。ブレーキ時にエネルギー回生しているためだろう、エンジンブレーキはよく効く。 最後に、トヨタ広報のK氏からの返信にあった一文、じつはほとんど全文をコピペして、勝手にご紹介しておきたい。筆者もおなじ感想を抱いたからだ。 「ご連絡頂いた件ですが、機構上もっとも変化が大きかったのはToyota Safety Senseが最新の第三世代に進化したこと、上級モデルのメーター意匠が変わったことなどで、そのほかの機構面の変更はございません(ハイブリッドシステムも、いわゆる第4世代のままとなっております)。 とはいえ、このモデルについては、『新しい車両ほど、乗り味が良い』というご評価を頂くことは多いです。当方としては、その感触を大切にしてください、としか申せません(笑)。スペック上の変更点は特になくとも、熟成が進んでいる、ということは確かだと思います」 私も自らの感触を大切にしたい。そして、思うのである。トヨタの、あるいはニッポンの自動車産業も熟成が進んでいる、と。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)