日本に豊田章男氏がいたのは幸運だった…「EV化の真実」を主張し続けた豊田氏が筆者に明かした「真意」
■「豊田章男氏の姿勢は支持に値する」米紙が紹介 この記事が出た2年後の2023年、ウォールストリートジャーナルが社説で「トヨタのEV対応、異端視され標的に」と題する非常に興味深い記事を出した。 気候変動対策推進派のロビー団体や進歩的な投資家たちがあの手この手でトヨタにプレッシャーをかけている状況を伝える一方、EV急増に見合うバッテリー需要を満たすだけの天然資源の確保は困難であること、EV1台分のバッテリーに使う原材料でプラグインハイブリッドなら6台、ハイブリッドなら90台生産できること、そして90台のハイブリッドによる二酸化炭素削減量はEV1台による削減量の37倍に達するというトヨタの試算を紹介。 「気候変動対策推進の信奉者にとって不都合な真実を語る豊田章男氏の姿勢は支持に値する。そして、自動車業界リーダーの中で、そうした行動を取る勇気を持った人物が彼だけだというのは、恥ずべき状況だ」という結論で締めくくった。 ■「豊田章男会長のコメント」の中身 実はこの記事を紹介した私のSNSに、豊田章男会長からコメントが付いた。 「残念ながらこんな記事を書いてくれるメディアは日本にはありませんね。日本での発信は、正直、意味がなくなってきてますね」 本当にそうだと思う。 なかでも傑作だったのが、上記ウォールストリートジャーナル社説の1カ月後に出た日本経済新聞の社説だ。 「日本車は謙虚な学びでEV化に対応を」と題し、「電気自動車(EV)の波が自動車市場の競争ルールを塗り替えつつある。エンジン時代に世界をリードした日本車各社は、過去の栄光にとらわれて後手に回ってはならない。先を走る海外の例から学んで事業モデルを刷新し、日本を引っ張る基幹産業として存在感をさらに発揮してほしい」。 数年前ならまだしもEVブームの減速が表面化した時点でどれだけ周回遅れなんだよ、と、このご高説に自動車関係者の多くが呆れたのは言うまでもない。