阪神 今季初勝利の1つの分岐点とは? 梅野と才木の信頼関係が見えた三回2死満塁での巨人・岡本和封じ
阪神が今季初勝利を挙げた3月31日の巨人戦(東京ド)。0-0で迎えた三回2死満塁、才木-梅野のバッテリーが4番・岡本和を抑えた場面は勝敗の分岐点となった。空振り三振に仕留めた投球に、2人の信頼関係が見えた。 【写真】チャンスで空振り三振の岡本和 表情暗くガックリ感露わ ◇ ◇ 東京ドームのベンチ裏。グラウンドレベルから地上へとつながる長い階段を上り終えると、梅野は白い歯を見せてホッと息をついた。 開幕3戦目の巨人戦。死球で左尺骨を骨折した23年8月13日・ヤクルト戦以来、231日ぶりの先発マスクをかぶり、開幕2連敗を喫していたチームの今季初勝利に貢献した。「いやあ、本当に疲れましたね。今日は勝つことしか考えていなかったので。勝てて良かったっす」。心地よい疲労に充実感をにじませる。それだけ神経を研ぎ澄ませた一戦だった。 勝敗を分けた1つの分岐点が三回にあった。二回までわずか22球で無安打と、上々の立ち上がりを見せていた先発・才木が最初のピンチを迎えた。先頭・吉川の安打と、2四球で2死満塁。打席に4番・岡本和を迎えた。 30日の開幕第2戦で決勝2ランを放った相手主砲。さらに阪神打線は開幕から無得点が続いていた。序盤で先制点を奪われると大きなダメージとなりかねない場面で、梅野は覚悟を決めた。 初球は外角フォークを見逃しでストライク。2球目。才木が外角フォークを引っかけて、投球がベース手前でワンバウンド。それでも梅野は体を投げ出して止めた。 外角フォークを続けた後、カウント1-1からの3球目。ここで梅野は内角直球を要求した。「どこかでインコースへいかないとこっちが苦しくなる」。甘く入ると長打で大量失点につながりかねない。投手にとって厳しい状況で、才木は厳しいコースへ146キロを投じた。見逃しでストライク。「あそこへ投げ切れたのは大きい」と2人は声をそろえた。 直球を意識させ、カウントも優位に立った4球目。外角フォークがベース手前でワンバウンドしたが、またも梅野が見事なブロッキングで後ろにそらさなかった。 最後は、再三の後押しを受けた才木が応える。5球目。外角低めへ制球したフォークで岡本和に空を切らせた。 フォークが抜けると棒球になって痛打を浴びる可能性が高まり、ワンバウンドすると暴投や捕逸で失点するリスクもある。2人に怖さはなかったのか。 才木は「梅野さんがワンバンしてもあれだけ止めてくれるし、『腕を振ってこいよ』と言ってくれるので投げづらさはないですね。『ワンバンしても止めてくれるやろ』という気持ちで思い切って投げられています」と信頼を口にした。 梅野はブロッキングが続いたことに「まじでビビったっす」と笑いながら素直な心境を明かしたが、「自分は仕事を全うするだけなので。才木が信じてそうやって投げてくれるので、それを受けてやるしかない。最後は腕を振って、ギリギリのところへよく投げ切ってくれましたよ」と才木をたたえた。 岡本和とは0-0の五回2死で再び対戦。2人はフォークとスライダーだけでカウント2-2とし、5球目は内角直球でファウルを打たせた。相手がフォークを意識する状況で、続く6球目は外角直球で見逃し三振。「前の打席が効いていたのかもしれませんね」と梅野。相手主砲に仕事をさせなかったことは、今季初勝利の1つのポイントとなった。(デイリースポーツ野球デスク・西岡誠)